第23話 想定外

 皆さんは、幾つぐらいまでサンタクロースの存在を信じていましたか?




 私は割と早期に「いない」と思っていました。

 なので、小1くらいからクリスマスプレゼントは親にねだっていた。


 夢のない子供だった……



 というより。

 夢のない親だった――ともいえる。


 親が子供にサンタの存在を信じさせようと思えば、いくらでも偽装できる。

 偽装というと聞こえが悪いが、ようは子供にと信じ込ませる演出をすればいいのだ。


 毎年、サンタへの手紙を書いたら必ず返事が来るよう準備したり。

 プレゼントは内緒で買って、寝ている隙に置いておいたり。

 煙突はないけど、いかにもサンタが家に来たというように、子供に信じ込ませる演出を施しておいたり……


 そんな努力をしていても、ある程度の年になれば気づいてしまうものだ。


 それを成長と喜ぶべきか。

 心寂しく思うべきか。




 その上で、最初の質問。


『皆さんは、幾つくらいまでサンタクロースの存在を信じていましたか?』





 我が家の息子。

 中二、男子――は、今だに信じている。


 本当に信じているのか。

 それとも、信じていなければプレゼントを貰えないから、信じているふりをしているだけなのか。


 そのどっちか分からないのだが。


 後者ならまだいい。


 けど前者なら――そろそろ笑えなくなってきた。




 毎年、シーズンになるとツリーを出して、サンタに手紙を書く。

 それをツリーに置いておくと、サンタが来て手紙を持っていく。

 手紙に書いた欲しいプレゼントが、クリスマスの朝起きるとにツリーの下に置いてある。



 この一連の作業。

 彼が幼少期から私がせっせと行ってきた。


 下地を作ってしまったのはこっちだ。

 それは認めよう。


 だが――まさかここまで信じ続けるとは思っていなかった。



 さすがに、どこかで気づくと思っていたのだ。

(ちなみに、長男は小4くらいで気づいた。長兄は冷静だな……)



 それなのに。




 今年も彼は、いそいそと準備を始めたではないか!

 手紙を書き、クリスマスを心待ちにしている!



 そんな彼に、今更『実は母がサンタのふりしてやっていたんだよ~』なんて――






 ……言えない。






 言えないよぉぉぉ……




 まさかここまで信じるとは想定外だよぉぉぉ(笑)




 旦那がさり気なく「サンタなんていないよ。勝手に家の中に入るのは泥棒だろう」と、穏やかに目を覚まそうとするのだが――


 息子はかたくなに「いる!」と言い張る。




 あぁ。

 神よ。


 不確かな存在を、と信じ込ませてしまった我が罪を――

 どうか許したまえ……




 2024・12・13

 天気 曇りのち晴れ







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る