第7話
日付が変わり、24時2分。
やっとのことで、泉谷智と高橋巧は牢獄から出れた。ただ、問題はここだった。
牢屋から出たのはいいが、努力が足りない看守たちが追いかけてくるまではあと数時間もないだろう。最初に考えたのは、走ることだったが、敵は交通手段を使うだろう。電車は、もう終電が出発した頃だし、駅がそもそも遠い。バスやタクシーは乗り場は近いものの、この時間に動いていない。
泉谷は塞ぎ込んでしまった。高橋が泉谷の背中を叩いた。
「大丈夫や、絶対」
泉谷一家の中で、泉谷兄が目を覚ましたときだった。朝食にと取ってあったローストビーフとサラダにピラフ、そして餃子がなくなっている。サランラップは半分剥がれているし、スプーンには米粒がついている。
泉谷兄はもう一度目を擦った。だが、同じことだった。
3時48分。泉谷兄は洗濯機からシワシワの服を取り出している。脱獄軍は、結局走っている。
「タクシーが動くまで走るつもりかよ」高橋が言った。「流石にそれはやばいぜ」
「そうなっちゃうね」泉谷は苦笑しながら言った。「計画は多少変更になっちゃったけど、ね」
4時49分。この辺りのタクシーは通常より少し早く動き始めている。近くに省庁があるためでもあるし、この辺りはいわば「ホテル密集地帯」であることも関係している。
作者はキーボードを一心不乱に打ち続け、世界を生み出しているし、騒がしい。
「潮騒の音が聞こえるで、朝や!」
高橋巧は喜んで手を上げた。少し待っていると、タクシーが来た。泉谷はぶっきらぼうに一万円札を五枚、一千円札を四枚、百円玉を十七枚、五十円玉を四十枚渡した。「五万七千七百円。暇だから、数えてたんだ」そう照れくさそうに笑う。
しかしすぐに真剣になった。「これで行けるとこまで行ってください」
アクアライン、海ほたてパーキングエリアまで行った。
「じゃあこっちへ曲がってください」
そして、57700円中9023円残っているが、目的地のある場所に着いた。
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