8 ハルの不思議な能力
朝の柔らかな陽射しの中、採掘場で零は地道な作業を続けていた。
槌を振るう音が静かな谷間に響き、零は汗を拭いながら岩を削っていた。
しかし、そばにいるハルが何かを気にしている様子で、じっと一点を見つめていた。
「ハル。何か気になるのか?」
零が声をかけると、ハルは念話で答えた。
「うん、なんか変な感じがするよ。あっち、掘ってみたらどうかな。」
彼女は尾をぴんと立てて岩壁の少し離れた場所を指し示した。
零はハルの感覚を試すつもりで、その場所を掘り始めた。
しばらく槌を振ると、岩の隙間からきらりと光るものが見えた。
零は注意深く岩を取り除き、その石を手に取った。
「これは…トパーズか。」
鑑定スキルを発動すると、それが非常に純度の高いものだと分かった。
零は驚きと共にハルを見つめた。
「本当にすごいな。どうやってこんな場所を見つけたんだ?」
「んー、なんとなく分かるんだよね。いい感じの場所って。」
ハルは得意げに尾を揺らし、零を見上げた。
その仕草に零は笑いながら頷いた。
「よし、これからはハルの感覚をもっと信じることにするよ。」
午後、零は加工場でトパーズの加工に取り掛かっていた。
現代の地球の技術を駆使した加工場では、彼が丁寧に石を研磨し、美しいアクセサリーへと仕上げていく様子が見られた。ハルは加工場の机の上に座り、時折念話で声をかける。
「ねえ、零。次に掘る場所も私に任せたら?」
「まあ、今日の結果を見る限りハルに任せるのが良さそうだな。」
零は軽く笑いながら答え、研磨機から完成したトパーズを取り出した。
宝石は夕陽を反射し、暖かな黄金色の光を放っている。
「うん、私の感覚は間違いないでしょ?」
ハルは満足げに言いながら、前足で毛づくろいを始めた。
零はその様子を見ながら笑いをこらえ、アクセサリーの仕上げに取り掛かった。
完成したトパーズのアクセサリーは、町の市場で大評判となった。
零が持ち込むたびに新しい宝石の美しさに人々は感嘆し、特に今回のトパーズはその輝きとデザインの精巧さで多くの人を魅了した。
「これ、本当に素晴らしいわ!零さん、ありがとう!」
アクセサリーを手にした女性が満面の笑みを浮かべて零に礼を言う。
その姿を見て、零は控えめに微笑んだ。
「石が良かっただけです。見つけたのはハルですから。」
零が足元のハルを指し示すと、彼女は尾を揺らしながら誇らしげに鳴いた。
「そうだよ、私が見つけたんだからね!」
「次も頼むぞ。ただし、あんまり調子に乗るなよ。」
零とハルの連携がますます深まり、彼女の不思議な能力が採掘の日常を一層充実したものにしていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。