Re 起

 自らの身体からだに火を放ち、炎でこの世との縁をつ。


 それしか、女には方法がなかったのだろうか。

 そこまで 女を追い込んだのは、一体何だと言うのだろうか。



 ただ、娘の幸せを願いながら、

 自らの幸福しあわせは後回しにして。

 笑顔を忘れた

 女のこころは、ついに壊れた。



 いつまで 耐えれば許される?

 どこまで 続くか分からない。


 女に襲いかかる不安と苦悩。

 不穏な未来を絶つために、

 女は炎をその身にまとった。



 そんなことなど何も知らない少女だけが、

 娘を案じる女の姿に気づいて見ていた。



 女の目に、少女の姿は映っていない。

 女が見ているのは、娘だけ。

 娘には、何も見えていない。

 女を追い込んだ祖父母への怒りだけが、娘を捕らえて、叫ばせた。


 女は、哀しそうに娘を見ていた。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る