Re 試

 ひとりの少女が、を見ていた。



 は、少女に見つかった。


 彼は、女の魂を天へと連れて行くために、天からつかわされてきた。


 自らの手により無理やり引きがされたたましいが、地にとどまることのないように。


 彼は、彼に与えられた任務を遂行しに来ただけだった。

 それなのに……



 彼の姿を見た少女は、自分も連れて行って欲しいと願った。


 もろい魂。

 少女も、このままだと いつか 

 この女のように、自らの手で壊してしまうのかもしれない。

 そんな危うさを見せつけられた。


 だから、

 彼は、『今じゃない』とつぶやいた。


 少女には聞こえないかもしれない。

 けれども、

 少女に届くことを願って。


 少女には、まだ時間がある。

 地で課せられた役目も果たせずに天に昇ることは、ゆるされない。


 それゆえ

 与えられた生をてた この女には、新たな試練が課せられる。


 そのために、

 こうして 天からの遣いが

 女の魂を拾いにきたのだ。


 このままでは、どこへも行けず彷徨さまってしまうから。地に留まってしまうから。


 浮かばれない魂を導くためにやってくる

 天からの遣いは、時折、地の子どもに その姿を見られてしまうらしい。



 は、その姿から、死神のようだと云われていたが。

 天からの遣いである彼が、人間ひとの生命を奪うことはない。


 ただ、魂を運ぶだけ。




 は、ただ 魂を運ぶだけ。

 天へ、地へ、と 運ぶだけ。











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