再試

 天使に会ったのは、伯母おばの葬儀が済んだ後のことだった。

 伯母の突然の死に、従姉いとこは悲しみよりも祖父母達への怒りをあわわにしていた。


 幼かった私には、伯母の死について 何も聞かされなかった。

 他界したという事実だけを告げられ、葬儀に参列させられた。


 突然、この世から人が消えたという事実に、驚くしかなかった。

 突然、この世から去りたくなるような苦しい現実など、その時は

 だ知らない子どもだったのだ。


 伯母の葬儀は、身内だけで行われた。

 伯母の死因は、大人だけが知っていた。


 この世から消えたはずの伯母が、そこに現れた時、

 私は、黒い影を見た。


 従姉は怒って、祖父母を責め立てていた。

 従姉のために、伯母はどれだけ我慢をしてたのだろう。


 悲しみよりも怒りであふれる従姉の姿を 伯母は哀しそうに見ていた。











 その伯母を、

 あわれみをもってみる 天使と目が合って、

 私は一瞬、息が止まった。



 私も連れてって



 なぜか、そんな言葉が浮かび上がるほどに。



 けれども、

 は、静かに首を横に振って



「今じゃない」という声を残して去った。











「今じゃない」なら、いつか迎えに来てくれるよね。


 それだけが、私の支えとなった。








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