05.


 なんか、喉から変な声が漏れた。

 姉?

 叔母?


「あら」


 俺の反応を見た羽菜はなさんが、口元に手を当てて、驚いた表情をしている。そして俺が、どなたですか、と聞く前に――


「ちょ、ちょっと、お母さん! 寝間着のまんまじゃん!」

「んぇー? そりゃそぉですよ。お母さん寝起きだもん」

「着替えて! 頭もー!」


 瀬尾せおくんはケーキもほっぽり出して、女性の方にバタバタと走って行く。

 リビングには、俺と羽菜さんだけが残された。


 ……………………。

 どういうことだ?

 いや……どうも、こうも。

「…………」

 なんか、瀬尾くんの会話から、大体察してしまった。

 羽菜さんは困ったように、そして申し訳なさそうに、眉尻を下げる。


「ごめんなさい、びっくりさせたわね。リュウからは、何も聞いてない?」

「あ、いや、全然……すみません、こちらこそ」


 そうは言うものの、表情はまったく伴っていないだろう。

 だって、驚いている。驚いているし、困惑しているし、戸惑っている。

 なんだか、とても、異質なものを見てしまった気がする。

 羽菜さんも困った様子で、


「えっと、どこから説明すればいいかしら。賢治けんじくんの世代って、“レズビアン”とか“同性愛者”とか言ったら、わかる?」

「わ、わかります。その、お二人の関係も……なんとなく。テレビで似たような人たちを、見たことがあるので……」

「そうなのね。知ってもらえているのは、嬉しいわ」


 羽菜さんはそう微笑んだ……けれど、多分。俺が困惑していることは、察していて。


「でもやっぱり、びっくりするわよね。珍しいでしょ」

「あ、いえ、いえいえいえ……」

「遠慮しなくていいのよ。それに、嫌だったら嫌って、言ってくれていいから」


 そう、はっきりと告げる羽菜さんは、妙に潔く、男前に見えて。


 …………。


「……嫌、じゃないです。ただ、びっくりして……」

「うん。先に私から、説明すればよかった」

「ええと、すみません。あの、どう聞けばいいかわからないんですけど」


 俺は口をモゴモゴさせながら、言葉を選んで、選んで、選んで……結局ストレートで、こう尋ねた。


「女性同士のカップル……ですよね?」


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