Vhunter~廃墟で霊を狩るV~
霧水三幸
プロローグ
2050年12月31日、後に『厄災の日』と呼ばれる日。
世界は突如として暗闇に覆われ、街には怪異が
その日から人類は、『遺跡』と化した町々から区切られた空間に身を寄せ合う事で滅亡を免れていた。
AIに管理された、居住区と呼ばれるそこに霊が出ることはない。
――そのはずだった。
少なくとも居住区で生まれ育った俺は、13年間そうと信じて疑わなかった。
だがその妄信がどんなに愚かしい行為であったか、眼前に立つ亡霊にたった今理解させられたところだ。
まだ10歳にも満たない小柄な少女が、どす黒く淀んだ棒状の影を手に持っている。
その先端から伸びているのは三日月を連想させる形状の刃。
持ち主の体格に見合わない、大振りな漆黒の鎌。
既にあの刃にかかり数名の男女が
それらは全員大人であり、本来の対格差で言えばこの少女に負けるはずがなかった。
だが結果はご覧の通りだ。
霊に憑依された相手に常人が敵うはずもない。
そして、いよいよ次は俺の番だ。
鎌と同じく、どす黒く染まりぽっかりと開いた少女の
『
AIの機械音声が、真っ白い部屋の上部に設置されたスピーカーから無慈悲に反響する。
要するにこれは『助ける価値なし』という意味だ。
その証左として、先程この部屋の扉は施錠されている。
外にいる大勢の命を助けるために、『無能』にカテゴライズされた俺たちはこの部屋ごと打ち捨てられたのだ。
――少女が、鎌を振り上げる。
逃げなくてはいけないのに、腰が抜けてその場から全く動けない。
心臓が早鐘を打つ。
まだこの鼓動を止めたくないと、こんなにも生存本能が叫んでいる。
だが、無慈悲にも漆黒の月は俺の首元めがけて一思いに振り下ろされた。
そして刃は俺の顔面スレスレを通り抜けて斜め下に転がっていく。
「……?」
何が起こったのか解らないまま、ただ震える視界で少女が倒れるのを捉えた。
ややあって何とか目線を上げると、その先に立っている別の少女の存在に気がつく。
俺と同年代くらいに見える彼女が持っている真紅の薙刀は、今しがた持ち手の部分だけを残し赤い光の粒子となって消失していった。
「……もしかしてアンタ、Vhunterの──」
誰かが薙刀の少女を指差しては、そう呟く。
――Vhunter。
殆どの人間が居住区から出ないまま一生を終える時代に、怪異の巣窟である『遺跡』へと乗り出す者。
バーチャルを介し怪異の調伏を人々に披露する者。
――それに命を救われたこの日から、俺はVhunterを志すようになった。
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