額の十字架

Rotten flower

第1話

洗面台の鏡をまじまじと見つめる。

昨晩にはなかったはずの十字架が俺の額についていた。顔に水をつけて少しこすってみる。水性なら簡単に取れるのだが、油性なのだろうか。そんな簡単には落ちなかった。

…はぁ。もちろん、犯人についてはある程度わかっている。亜美璃あみりだろう。同棲中の彼女だ。同棲中ならこんなことをするのは容易い。

「…亜美璃?」

「ん…何?」

寝起きで頭が回っていない様子だ。表情が少し蕩けている。

「この十字…何?」

僕は多少なり威圧感を出すようにして問い詰めた。彼女は少しの間、黙って考えると思い出したかのようにすっきりとした表情で言った。

「あぁ!…それ、私が書いたやつね!」

と、自ら白状してくれた。

どうやら、昨日二人飲み会をして罰ゲームでこうなったのだとか。完全に僕の記憶が飛んでいた。


「一筆だけで、おでこに縦線書いたっけ?」


…あれ?

縦線だけ?

じゃあ横線はいつ?

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