ムシフラ注意な配信者

麝香連理

第1話 

「ついに!ついに手に入れたぞ!スマートフォンとルーターを!」

 ついに現代に追い付いたァ!!!

 俺はウキウキルンルンを抑えながら部屋にルーターをセットする。確かここに……………よし。

 後はこれ通りに設定をして……………よし、スマホで繋ぐだ…………エラー?…………エラー?

「おっかしいなぁ………んんん………」

 困った時の友達召喚だ!

 玄関にある黒電話を取り、未だに連絡先を知っている唯一の友人宛てにダイヤルを回した。

『はぁい?』

「よっす、ルーターのやり方おせーて。」

『お!お前もついに現代人の仲間入りだな!で、何が分かんないんだ?』

「んーーー全部!」

『………オッケー了解。一から設定してくれ。』

「任せろ────────────







『フゥーこんなもんだな。』

「おぉ!ウィフィーが繋がったぞ!」

『良かったな、それとWi-Fiだ、Wi-Fi。』

「すまんすまん、ワイファイな。」

『うん……それより、ラ……じゃ分からんか。メール交換しようぜ。』

「おぉ!ついに電話以外で連絡が取れるんだな!便利で良いぞ!………どうやって?会えば良いのか?」

『お前なぁ……教えるから。』

「おう。」

『まず、緑色のアプリがないか?ちょっと丸いやつ。白い吹き出しのなかにアルファベットが書いてあるんだけど。』

「あった!」

『じゃあそれ押して……』

「お?アカウントなんちゃらって出たぞ!」

『………うん、設定しよっか。』

「おう!」







 そんなこんなで諸々を終え、その後はお互いの近況報告となった。

『それより、お前はいつまで山籠りするんだ?自給自足って言ってるけど、ちゃんと食ってんのか?』

「おう、食べてる食べてる。それにこの生活を辞めるつもりはないぞ?折角両親が遺してくれた土地なんだから。」

『そーだな。

 あ、そーだ折角スマホ持ったならおすすめの動画を教えてやるよ。』

「動画?」

『そ、動画。世界中の映像をそれで見れるって代物さ。』

「ほーそいつぁすげぇや。」

『まず、赤くて、真ん中に白い三角みたいなやつを押して。』

「おう………アカウントなんちゃらがまた出たぞ!」

『……………知ってた。』

 今回は二度目とあって自分で頑張って設定した。流石におんぶにだっこは申し訳ない。

「出来た!」

『ナイス!それじゃー、創李益火で調べてくれ。』

「つ…く……り……ま……す……かと。これかな?

 ブイ……ちゅばー?ってなんだ?」

『ふっ、VTuberな?まあ、見てくれ。』

 取りあえず、一番上にある動画をタップした。

「…………絵が動いてる。」

 バン!

 電話の奥でとてつもない音が響いた。

「ほあ!?」

『スマン……知らなくて当然だよな。つい怒った自分を殴りてぇ。』

「え…なんか悪いこと言っちまったか?」

『ああ、ちゃんと説明するよ。』


 どうやらVTuberという職業は、その絵やモデルになって人々を楽しませる、らしい。正直ピンと来なかったが、このVTuberを絵、とか探るのではなく、一人の人として見ないとまた怒らせるだろうとは何となく感じた。


「へぇー……最近は不思議な職業もあるんだなぁ。」

『……なぁ。』

「なんだい?」

『VTuber、やってみないか?』

「ほあ?」

『お前いつも野菜とかの世話でそこから動けないだろ?だから少しでも外に触れるためにさ。』

「………本音は?」

『大物になったら創李ちゃんとコラボしてサインもらってきてください!』

「それが狙いか………」

『頼むぅ……一生のお願いだぁ………』

 こいつがここまで懇願するとは珍しい。

 正直乗り気にはなれない。全貌も掴めないし。

 しかし、ここで断るのも後味が悪い。

「ふー、売れる保証は出来ないぞ?」

『ホントか!?助かる!』

「それで?VTuberってのにはどうやってなれば良いんだ?」

『取りあえず────



 なんか一杯教えられたけど、よく分からん。

 取りあえず個人と企業?によってなんか違うってことしか分からなかった。


「しかしなぁ、企業ってんなら面接あるだろー?俺行けないぜ?」

『そうなんよなぁ………どっか…………あ。』

「どったの?」

『中堅の企業が地方の人限定で募集かけてる。オンライン面接が………可能だってさ!』

「ほぉー?なら俺でも?」

『あぁ!面接受けられるぞ!』

「その企業に創李ちゃん?は所属してるのか?」

『してない!創李ちゃんはアイドルだから、そこには女性しか入れない!』

「は?アイドル?じゃあ俺コラボ無理だろ。流石にアイドルに男が近付いちゃいけねーってくらい俺でも分かるぞ。」

『大丈夫大丈夫。お前顔以外は女やん。』

「あ?」

『今だって声が女だぞ?』

「うわ、マジか!くっそぉ……低い声疲れんだよなぁ。」

『はは、だから性別不明とかにしときゃいけるいける!』

「そんな軽くいうなよなぁ………」

『ま、俺もサポートするからよ、とりま面接受けてみろよ。』

「わーったよ。なんて会社?」

『益荒男って会社。』

 アイドルとかけ離れてるじゃねーか!

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