*転生²ザ・標融合譚

@Shiras_Shiro_920

二乗転生 編

1ページ目*現世に敗北

◇ ◇ ◇


《……線、地下鉄日比谷線はお乗り換えです。The next stop is Ebisu…… 》


満員電車の中でそんなアナウンスが流れる中、私、『柊 七彩 ひいらぎ なのは』は、学校に向かう。…今日は16歳の誕生日だって言うのに、なんで学校まで行って憂鬱な思いをしなくてはならないのか。


実は私は、クラスで ”イジメ” を受けている。その理由は、私のクラスには常に身勝手で自分の思うように周りに指示したりする女の子がいる。その子には好きな男子がいて、私はその男子から告白された。だけど、私は断った。そのせいか、トイレの個室に監禁されたり、変な噂を流されたり、他にも数え切れないほどの嫌がらせを受けている。

正直、ここまでされても不登校にならないのは自分で言うのもなんだけど、凄いし偉いと思う。


かと言って、…相談できる勇気も無いんだけど…


私は満員電車から降りて駅を出る。

今日も、そんな重い足取りで学校へ向かう。


学校に着くと、いつもの憂鬱な空気が漂っていた。まぁ、この空気を感じるのは私だけだと思うけどね。


「ひーちゃんおはよ。……大丈夫だよ。今日もうちが付いてるからさ。誕生日、おめでと。」


ふと、南門を抜けて重い空気で歩いていると、小学校からの付き合いの 田中 千紗、通称ちさちゃんが優しい声で話しかけてきた。

彼女は数少ない唯一無二の………理解者。


「おはよう。…ありがと。」


「行こっか。」


そして私たちは、再度歩み始める。

正面玄関で靴を脱ぎ、二階にある教室へ向かおうと、階段を上る……が、事件はここで起こった。


『なのは、誕生日おめでとう!!』


私に嫌がらせをしている女の子が柱の裏から出てきて、階段を上っている私たちの目の前でクラッカーを鳴らし、



ー私を蹴り落としたー。



私は体の至る所を打ちながら落ちていく。

痛い。

痛い。

痛い。

痛い。

痛い。

……

……

……

……



打ったところがジワジワしてるし、どこか細いところに刺さったのか、生暖かくて紅色の液体が流れている。最初はアドレナリンが大量に放出されて、あまり痛みを感じなかったんだけど、時間経過とともに痛覚が敏感になる。


「なにしてんのよっ!!!!!」


「やり過ぎだろ!!」


「なのはちゃん!なのはちゃん!先生呼んで!!」


「警察も呼んだ方がいい。救急車も呼ぶね。」


「最低!!」


周りからどんどん人が集まってきて、私を心配する声と、嫌がらせ女を罵倒する声が聞こえる。


「ひー、…ちゃん……!!!!!」


ちさちゃんは、声が出せないらしく階段の上から絶句している。


『こいつが、こいつが勝手に落ちたのよ!!!信じてよ!!そもそも、こいつのせいで!』


あぁ、こいつはいつになってもクズなんだな。もう手に追えないよ。階段から落としたら怪我することくらい、赤ちゃんでも分かる。


ここから先は、何も知らない。何故なら、

私の視覚、聴覚、触覚、その他諸々と、




ー私の〘命〙が、ここで尽きたからー。



◇ ◇ ◇


「歓迎するぜ!今日の主役は誕生日ボーイの、ツバキだからな!俺の奢りだから遠慮せず頼めよ!」


「あ、あぁ。ありがとな…!」


僕は今ギルドの近くにある宴会場で、誕生日を祝われている。


あぁそうだ。ご紹介に預かりました通り、僕の名前は 『”ツバキ” 片瀬 椿』

ここは、まぁ世間一般的に言うと、”異世界”だ。

あぁ、何故こんな名前なのか気になりますよね。それは、


「僕が転生者だからですよ。」


ツバキはボソッと呟いた。しくじった。

つい、ダメだよ。こんなことがバレたら…


そんなことより、…全く。僕がいくら誕生日だからって、パーティを開催してくれるのは良いものの、…たかが僕なんかに百人も居る必要あるか?

まぁ、みんなノリノリだから良いけど…っていうか、本当に友達百人いるやつ…いるんだな。


精神がすり減るよ……スープでも頼むか。


あれから、かれこれ二時間くらい盛り上がった後、本当に申し訳ないが僕は用事があると言ってその場を後にしてしまった。自分が祝ってもらってるのに、罪悪感すごいな…


まぁ、でも僕はここの世界に来て上手くやれていると思う。一年経つな…あと少しで。


転生者ってことをこれからも隠し通さないとな。何故なら、



ー転生者は ”転生者狩り” によって拉致されてしまうからー。



あぁ、転生って…もっと夢のあるものだと思ってたんだけどな。


● ● ●


その言葉が、まさか特大なフラグを立ててしまっていたとは。


〇 〇 〇


私の壮大な第二の人生が始まるとは。


◑ ◑ ◑


”まだその時は微塵も思っていなかった。”



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