1‐2 怪力乱神の禁と不語の妃
「きたか、近こう寄れ」
飾り棚には
「
「
「大陸を統べる
「ひき続き、皇帝陛下の
父親たる
時を
大陸が八つの
この英雄が
ただ、奇妙なことに羲の皇族の
皇帝が咳をした。
「して、御容態はその後如何ですか」
「
皇帝は昨年の秋から
もっとも、混乱に乗じて都合よく政を動かそうとするものたちがいるのも事実だ。
だからこそ、
「職務怠慢です。そのような宮廷医は処分するべきかと」
「事実、何処を患っているわけでもないのだ。宮廷医を裁くのは筋が通らぬ」
「患っていない、ですか」
果たして、どういうことだろうかと、
「ただ、眠れないのだ」
ため息のように皇帝はつぶやいた。
帳の
政を
こうならねばならぬもの。
「昨秋、なにがあったのか、そなたにだけは教えておこう」
皇帝は声を落として語りはじめた。
「昨年領地を開拓するため、軍を連れて北へと遠征したのは知っておろう」
大陸を統一して時は経ったが、いまだに皇帝の
想いかえせば、その遠征から帰還してから皇帝は
「月夜であった。赤々と燃えあがり崩れていく森から、おもむろに
夭は想像する。
錦を織りなす
灼熱の風が吹きあがり、森はいっきに火の海となる。
荒れる火の波から舞いあがる
それは地獄のように美しかっただろう。
続けて皇帝から語られたことは到底、現実とは想えなかった。
「
そのようなことがあろうはずがない。
だが、皇帝が嘘を語っているとはどうしても考えられず、よけいに夭は惑った。
「慌ててかけ寄ったが、矢が胸を貫き、
皇帝が呻き、頭を抱える。
「夢をみる。燃える夢だ。この身が燃え、骨になる。眠っている
皇帝は酷く神経質な声をあげ、敷き布を掻きむしった。
皇帝は奇異なる事象をいっさい信ずることのない豪胆な男であった。
「かならずや祟りましょう」と呪詛を
その皇帝が
まして、これは
神怪とは
時の皇帝が禁じたそれらを、現帝である彼が語るなど錯乱しているとしか考えられない。
「どうか、そのようなおたわむれは」
「
皇帝は
「
視線で帳を貫くように皇帝の眼が見張られる。
「だが、それを公に認めることはできぬ。時の皇帝――羲の第二代皇帝の命に反することになるからだ」
大陸統一を果たした
よって第二代皇帝は「皇帝のみが神である」と宣明したうえで論語を
「
怪異や
「
かみ締めるように皇帝はつぶやいた。
困惑する夭の心境を知ってか知らずか、皇帝は枕のなかに隠されていた鍵を取りだして夭の手に握らせた。
「今後、神怪が宮廷をおびやかす事があれば、後宮に居る
「
「左様。語られざる
とてもではないが、理解が追いつかない。
日頃から冷静沈着な夭だから声の端が震える程度で踏みとどまっているが、神経の細い
「畏れながら、
「故に
「
皇帝はため息をつき、話すべきことは終わったとばかりに
不可解なことばかりだ。
どうにも
「十三年前、
「立太子宣明の儀を前に、
血を
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