第36話 林間学校の終わり
サバイバルも七日目になる。
結局、大した襲撃もなかったなー。
と思いつつ
昼飯の準備を
していた時であった。
「わ、わあ!?
とんでもない量が
襲撃してくるよ!?」
冬見が叫ぶ。
どうやら
あの人狼が
軍隊レベルで
襲撃を行っているらしい。
「どう思う、小泉……」
「う~~ん
また理事長が
やりすぎてしまっただけでは?」
そう言って
先輩二人がカラスを見る。
カラスは何の反応もしない。
予定通りのレクリエーションのようだ……。
「こ、このままだと
人狼の群れが
こっちにきますよ!?」
「ふん、上等じゃない
ぶっ飛ばしてやるわ!!」
夏芽がパンッ、と拳を打ち合わせる。
まぁ、多少の群れなら
二日目に斃したけれど……。
「ひとまずここでは
やや不利……
どこか崖上に逃げますぞ」
「テントを回収している暇は……
ないな……」
そう言って先輩方が
逃走を始めた。
俺達もそれについていくことに。
流石に幻力で強化されているだけあって
かなりスピーディな移動だ。
結局、崖の上まで
逃げ伏せることが出来た。
おかげで追いかけてくる
人狼達をなんとなく把握できる。
木々越しにだけど……。
いや、けっこうな量だな!!
木々があってもわかるぐらいだ!
「こいつら全員斃すの……?」
「厳しいですねぇ」
小泉先輩通れが話していると
飯塚先輩が「ふぅむ」と呟いた。
「近くに幻獣核があるはずだ……」
「幻獣核?」
「いわばボス、だな。
そいつが幻獣を増やすんだ」
「稀にしか発生しませんけどねー」
ともあれボスを探せばいいのか。
それなら夏芽の索敵結界で
見つけられるか……?
「よし、夏芽。
索敵結界で
ボスを探してくれ」
「了解よ!!
先輩方もいいかしら?」
先輩たちが頷くのを
見てから夏芽が
広範囲に索敵結界を放つ。
しばらく印を結んで
夏芽が集中していると……。
「あったわ! あそこらへん!
ひときわ大きい反応がある!!」
「む……少し遠いな
仕方ない、転移させるぞ」
「飯塚、複雑な術式は
疲労が大きいんじゃ?」
「そうも言ってられないだろう」
飯塚先輩のスマートフォンから
白いカラスが出てきたかと思うと
そのは寝が俺達を包み込み
夏芽が示した場所──
その少し上へと転移した。
落下していくその先には
もはや人狼とも呼べない
毛むくじゃらの化け物がいた。
あいつがボスか!!
俺は黒孔雀を引き抜き
戦闘態勢を取る。
次の瞬間、俺は
「月光」によって
ボスを斬り伏せていた。
「ガァアアアアアアア!?」
切り裂かれ、消滅するボス。
同時に周りの人狼も
消滅していく。
これでサバイバルも
終わった……のか?
一応警戒してテントに戻ったが
ついぞなにも起きなかった。
翌日になり、カラスによって
学園へと転移させられる。
そこはいつもの校庭。
演説台の上に理事長がちょこんと立っていた。
「いやぁ、お疲れ様! 楽しかったかい!?
七日目はけっこうハードにしてみたけど!」
周りを見ると
少なくとも俺の同級生は
ブルブル震えているものばかりだった。
無理もない。
人狼一体でも厳しいだろう。
上級生も
かなり不満がありそうな顔だ。
「ふざけるなー!!」
「ナーフしろー!!」
「せっかくの林間学校が台無しだー!!」
学生から響き渡る怒号。
これには理事長もタジタジで
少し泣き出しそうな顔になっていた。
泣きたいのはこっちだよ……!
「ま、まぁ調整ミスは
誰にでもあることだからね……!
来年はもっとマシにするから!!」
「普通の林間学校を用意しろー!」
「いい加減にしろー!!」
「俺達を解放しろー!!」
「それじゃあ以上! 解散!!」
バババッ、と理事長は逃げていった。
やれやれ……とんだ林間学校だった。
と言っても七日目までは楽しめたが。
俺達よりも遥かに弱い組は
たしかに気が気じゃなかったと思う。
「はぁ、とんだ林間学校だったわね
ねぇ、珀斗。口直しに海とか行ってみない?」
ぐぐぐ、っと伸びをして夏芽が言う。
「まぁ理事長と家の許可があればいけるかもだが……」
「わ、私も行きたい!!」
冬見もそんな事を言ってきた。
もちろん断る理由はない。
「おっ、では我々が監督しましょうかね」
「小学生だけで海は少し心配……だからな」
先輩方もついてくるつもりのようだ。
まぁかまわないけどよ……。
「どちらにせよ
家の許可を得ないとな……」
「はぁ……そうね」
「う、うん」
幻術師、世知辛いなぁ。
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