一学期編
第18話 一難去って
「お疲れ様、よくやったね」
帰還後、一通り風呂を浴び
色々と破れた制服を着替え直すと
理事長室に呼ばれた。
その机の上には
あの男が持っていた
橙色の降魔刀が……。
「しかし問題は山積みだ
ボウリング店に捕まっていた
人々は出来る限り救助したが──
なぜチンピラのような連中が
降魔刀を持っていたのか
さらった人々を何処に売りさばく
つもりだったのかなど調べなければいけない」
腕を組む理事長。
いつになく真剣な表情だ。
「大変ですね……」
「まぁ、それは大人のボクたちが
やるべき仕事だから気にしないでいい
問題はこの降魔刀の処遇だね」
「理事長が回収するんじゃないんですか?」
「君たちにあげてもいいってことだよ」
俺と夏芽が顔を見合わせる。
と言っても封魔刀と降魔刀は
折り合いが悪そうだ。
なにせ片方は術式を封じる刀。
もう片方は術式を強化する刀なんだから。
「じゃあ夏芽、おまえが使えよ」
「え、わ、私!?」
「俺は封魔刀使ってるから
使おうにも使えないだろ」
「それは……そうね……」
「では受け取りたまえ」
言われて夏芽が
理事長の机においてある
降魔刀を手に取る。
「おお……」
それを大事そうに
抱きしめると、こちらに戻ってきた。
「それでは改めてお疲れ様!
報酬は実家に振り込んでおくよ」
「報酬とかあるんですか」
「あるんだな、これが」
まぁ実家に振り込まれるなら
俺たちに縁のない話だが……。
そうして理事長室を後にした俺たち。
ひとまず疲れたので寮に戻ることに。
すると、夏芽が一言。
「ね、ね、私、刀の使い方は
さっぱりで……
よかったら教えてくれない?」
「まぁ、いいぜ。俺で良ければだけど」
俺も習っている身だけど
ひとまず先輩たちとの鍛錬に
誘えばいいか……。
ともあれ、こうして
俺の前世の復讐は終わったのである。
あの男を殺してしまったが……。
あいつは前世の俺を殺した。
それにたくさんの人間を殺してきたのだ。
斬り殺されても自業自得だろう。
そう思いつつも、その夜は眠れなかった。
◆
翌日、教室で寝ぼけていると
先輩方から教室に
やってきて話しかけられた。
「や! や! 周防殿、昨日の活躍は
聞いておられる! お疲れ様でしたな!」
青髪でショートカットの少女。
……といっても高校生だから、
俺より全然上。
俺の剣術を教えてくれている先輩だ。
名を小泉京子。
その横には寡黙で
根暗そうな男が立っている。
こちらは俺に術式を教えてくれる先輩だ。
名を飯塚
「あ~~だり……
だりぃけど、降魔刀っての……
見てぇんだよな……」
「まぁまぁ冥地さん!
で、手に入れた降魔刀は
どこにあるんですかな!?」
「ああ、夏芽が持ってるよ」
後ろの席に座っていた夏芽が
びくんと背を伸ばす。
まるで驚いた猫のようだ。
「え、えと、部屋に
置いてきましたけど……」
「緊張感が足りませんな~
周防殿なんて、いつでも
封魔刀を持っておりますぞ!
今も机の横に立てかけておりますし!」
「封魔刀は肌見放さず持ってなきゃ
ダメだからだろ……だる……」
「では夏芽殿!
よろしければ降魔刀を
お見せいただきたいのですが!」
「は、はい! 持ってきます!」
そう言って夏芽がシュバッと
駆け出していった。
それを見て小泉先輩はニコニコしている。
飯塚先輩は相変わらず
猫背気味にあくびをしているだけだ。
「さて、それじゃあ小泉先輩
今日も稽古つけてくれません?」
「いいですとも!
今日は術式ありでいきますかな!?」
ぺろり、と舌なめずりをしたのを
俺は見逃さなかった。
この人バトルマニアなんだよな……。
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