にせもの屋
道華
プロローグ
「人は誰しも、他人ないしは自分が決めた道の上を歩いているものよ」
未だ藍の残る朝焼けの下、開いたばかりの店の前で彼女は言う。
「これは比喩表現だけじゃなくて、現実においても同じことなの。誰だって遠回りをしたいとは思わないし、ましてや自分から迷子になりたいなんて思わないでしょう? でも、ほんの少しばかりその道から外れたくなった……そんな物好きな外道や、勇気ある迷子をこの店の顧客として受け入れたいと、そう思ったのよ。それが、こんな辺鄙な場所に店を開いた理由」
大人のように達観した言葉を、子供のように無邪気に捲し立てる彼女の姿が、僕には少し眩しかった。
「そして、そんな店に置いてあるものが道理に沿った正しいものであるなんて、あまりにもつまらないでしょう?」
悪戯っぽく片目を瞑って締め括った彼女から、徹夜で必死に取り付けた真新しい看板へと目を移す。
看板には少しだけ不恰好な、でも可愛らしい字でこう書かれている。
『にせもの屋』
にせもの屋 道華 @shigure219
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