アーサー・ドレイクの縁切り

いいの すけこ

アーサー、勘当される

「お前には心底、失望した。ドレイク家の顔に泥を塗りおって」

 高等学校の卒業も近い十八の時、アーサーは父から面汚しの称号を賜った。

「いい歳をして悪童や不良のような真似をして。まったくいい笑いものだ」

 父からの容赦のない罵倒を、アーサーはただ黙って聞いた。弁明も釈明もしなかった。

 視界がぼやけるのは泣いているからではない。それは父がもっとも厭うものだったから、アーサーは幼い頃から涙を封じて生きてきた。

 世界が霞んでいるのは、右目に包帯を巻いているせいだ。

「もはやお前は、私の息子を名乗る資格を失った」

 蛇にも似た、金に輝く両の目。侮蔑も顕な冷たい父の眼差し。揃いの金髪も、実に冷たい色をしていた。

「あの馬鹿者たち諸共、どこへなりとも行くがいい」

 馬鹿者との言い草に、こればかりは反論の言葉が口から出かけたが、アーサーは唇を噛み締めて堪えた。口の中に錆の味が広がる。

 それきり背を向けた父に、アーサーは黙礼した。負傷を免れた左目を閉じる。黒い瞳からは、やはり涙がこぼれ落ちることはなかった。








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