第5話 猫、愛しのあの子に近づけた

『開いた!』

 猫は嬉しそうにユニアルの背から降り、窓の縁に前足を置き体重をかける。後足を力強く踏み込むと、窓はカラカラと滑らかに開いた。

 猫が一匹通れるだけのスペースが開く。猫は喜びにその場で跳ねた。

 白猫のクスクス笑う声がした。猫が我に返る。コホン、と咳ばらいをした後、背筋を伸ばした。

『どうぞ入って』

 猫の言葉を聞いた白猫は返事をするように尻尾を立ててゆらりと揺らす。

『あら、ありがとう』

 白猫は細い窓の隙間をするりと抜けた。歩く姿はしなやかで、動くたびに首輪の鈴が鳴る。まるでおとぎ話のようで猫は見惚れていた。

『綺麗なお部屋ね』

 白猫が部屋の中を見渡す。

『オレのご主人、綺麗好きだから。オレも綺麗好きなんだぜ』

 猫はふふん、と背を逸らす。白猫に褒めてもらえると期待していた。しかし、白猫は猫のほうを向かず、ユニアルのほうへと歩いていく。そうしてユニアルに近付いたかと思うと、ユニアルの前に腰を下ろした。

『ありがとう。あなたのおかげで窓が開いたわ。あなたって、頭もいいのね』

 猫は驚きを隠せなかった。白猫のねぎらいの言葉をユニアルと半分にするのは仕方がない。しかし、これはユニアルだけを褒めている。

 ユニアルに褒め言葉を独り占めされた!

 猫はショックで動けなくなった。

 ユニアルがランプを点灯させた。

《ワタシハ標準的ナ知能シカ持ッテイマセン》

『ふふふ。面白い。あたし、あんたの事がもっと知りたいわ』

 穏やかではない会話に猫の心臓が早く動く。徐々に不安に顔が曇っていく。疎外されている猫は白猫とユニアルに視線を交互に移す事しかできなかった。

『なぁなぁ、そんな奴より面白い話しようぜ』

 猫は一匹と一体の間に割り込み話を振った。ユニアルには背を向けて尻尾を振る。あっちへ行けとユニアルに示した。

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