第8話 猫、お掃除ロボットに裏切られる
ガチャ、と鍵の開く音が鳴った。猫はそれが何を意味するのか理解していた。
『おっ。ご主人が帰ってきたみたいだぜ』
扉が開くとそこには疲れ切った顔をしたユイカが壁にもたれながら部屋へと入ってきたところだった。
「ただいまー」
力のない声で告げる。猫は尻尾を伸ばし、ユイカのそばに小走りで近づいた。ユニアルもその後ろをついていく。
「ただいまー。お出迎えありがとう」
ユイカは猫の頭を優しく撫でてやった。猫はその手に自分の頭を押しやって、もっと撫でろとせがむ。
「あれ、一緒にいるのね。もう仲良くなったんだ。よかった。これで寂しくないねぇ」
と言うユイカに、猫は自分の訴えを叫ぶ。
『聞いてくれよ! コイツ、オレの後を追いかけてくるんだ! うざったいったらありゃしない。どうにかしてくれよ』
ユイカはそうかそうかと優しい微笑みを猫に向ける。その顔から伝わっていないという事がわかり、さらに反論する。
『コイツが俺をいじめるんだ。なぁご主人、どうにかしてくれよ』
「よしよし。嬉しいのね。よかったね。じゃあご飯にしようか」
靴を脱ぎ、荷物はそのままにユイカはキッチンに向かった。流し台の下に手を伸ばして戸を開ける。猫の絵が描かれた袋を取り出しクリップを外して口を広げた。
「あら?」
ユイカは袋の異変に気付き、猫をじっと見る。猫は早くご飯とユイカの太ももに前足を乗せねだる。
「こんなところに穴が」
ユイカは猫を見ながら首を傾げ、指で穴をなぞる。猫は体を強張らせ、黙った。
「これはもしかして、あなたがやったの?」
ユイカは眉を八の字に歪め、悲しそうな目でたっぷりと猫を見やった。猫は言い訳がましく小さく鳴く。
《御主人様、ソチラハ彼ガ開ケタモノデス》
ユニアルがユイカに向かって話しかける。猫は何を言われたのか分からず、ユニアルとユイカを交互に見た。
『おい! お前! ご主人になんて言ったんだ?』
《御主人様ガ気ニシテイラッシャッタノデ、解答ヲ述ベマシタ》
『どういう意味だ、なんて言った?』
《アナタガ穴ヲ開ケタ事ヲ報告シマシタ》
『なんだってー!』
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