『超巨大ショッピングセンター、ムーンビッグモール かぐやとアヤ』

やましん(テンパー)

『超巨大ショッピングセンター、ムーンビッグモールかぐやとアヤ』 1


 なんでも、究極のでかさと小ささを追及する人類のことである。


 世界企業『地球で一番よ!』は、このほど月に、巨大ショッピングセンター『ムーンビッグモールかぐやとアヤ』を建設した。


 その巨大さは例えようもなく、パリの街とロンドンの街をふたつすっぽりと包み込んでしまう規模である。


 かぐやゾーンと、アヤゾーンに大きく分かれている。


 毎日24時間休みなく、地球各地から専用宇宙ショッピングバスが飛ぶ。往復で1000ドリムだから(1地球ドリム=1円)、高くはない。無休で活動している。


 『地球にあるものならすべてある。』


 が、売りであったし、まあ、誰も確かめてはいないが、まんざら間違いとは言えなかったのである。


 むかしの万国博覧会の拡大版みたいだ。


 当然ながら、地球からだけではなく、宣伝したわけでもないのに、遥かな宇宙からも、ツアー宇宙船がやって来るようになった。


 1番早かったのが、カスタネット星人である。


 開店の時に、たまたま、木星付近を探険していたため、すぐにやって来たのであった。


 まさか、宇宙生物が来るとは思っていなかった経営サイドのことだが、そこは、ビジネスである。

 

 社長は、地球連邦議長のお姉さんであり、地球防衛軍長官のいとこにあたる。また、地球平和会議の会長さんの娘婿の義理の母親であり、前地球連邦顧問の娘であり、地球連邦創設者の直系の子孫でもある。


 良くは分からないが、つまり、名家の出身である。


 さっそく、地球外生命体さま用のサービスも開発した。カスタネット星人がサポートをしたのである。

 

      🌏️


 マヤシンは、スローワークで見つけた、月のアルバイトで、カート整理係をしていた。


 祖先のことは、なにも分からない。


 ある日のこと、社長さんがやって来るという日、マヤシンはなんにも関係はないから、気にすることはなかった。


 しかし、この社長さん、毎日警護に囲まれ、ややこしい地球連邦の幹部たちと交渉し、部下からひたすら見上げられる生活が、嫌になっていた。


 そこで、タイミングを見て、脱走したのである。


 早い話し、おばあちゃんである。


 むかし、俳優に憧れて、有名なアマチュア劇団にもいたことがあるから、化けるのはなかなか、得意であった。


 そうして、売場を散歩して歩いていたのである。


 『ホテルを探そう。高いホテルだとすぐばれそうだ。うんと安いホテルを。あのおじさんに聞いてみよう。』


 と、目をつけられたのが、マヤシンである。


 『おじさん。ここに、かなりやすいホテルはないかしら?』


 『かなり安いホテル? あるよ。買い物に来て、お金がなくなったひとが良く泊まるのが。そこから入って、地下に降りて、左に曲がって。その右にあるのは、まあまあ、悪くない部屋がある。左側は、相当安いが、狭くてきついよ。むかし、月に初めて基地を建設をした人達の宿だったんだけど、事故も多くてね、地球=月戦争もあったし、だから、幽霊さんみたいな方も良くでるとか、言われるけど、まあ、安さでは月1番。場所は最高。スリル満点とか。スパイや、暗殺屋さんとかも良く泊まる。ただし、ホテル内では事件は起こさない約束らしいけど。』


 『あなたは、泊まったことあるの?』


 『あるよ。いつも泊まっている。』


 『幽霊さんはみる?』


 『ぼくは、みたことないな。幽霊さんより貧乏だし。恨まれる理由がないよ。あ、景色は全部写真。各部屋に ‘’月光神社‘’ の、お守りつきだよ。』


 『あら。ありがとう。行ってみるわ。』


 その人は、旅行鞄もなく、小さなバッグと紙袋だけぶら下げていた。


 『品の良い人だけど、なんだろなあ。タダ者ではないとみたけどな。スパイかな。ま、いいか。ぼくは、晩御飯の心配をしなくては。なんせ、また、物価が上がったし、時間給下がったし。やはり、みそ汁定食かな。ごはんにみそ汁と、おしんこだけだけど。それでも最高級だからな。住めば都、食べれば、みな同じ。』



       


 


 


 


 

 

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