第4話 爆弾投下
綿世康秀西播磨県民元局長は、前途洋洋を佐藤彦摩呂知事の意向により、頓挫させられた。県庁のそれなりの地位に就き退庁し、前猪俣歳三兵庫県知事が構築した天下り先で週数日出勤して、スポーツ新聞を読み時間を潰し、案件があれば以前の配下に連絡を取り、道筋を付ける尽力を行う、それだけで高額な報酬を得られる悠々自適の生活が待っているはずだった。佐藤彦摩呂知事は、前猪俣歳三兵庫県知事が積み重ねた債務の解消に乗り出した。県庁議員のOBの退職期限を下げ、民間企業との癒着を閉ざす意向を示していた。前猪俣歳三兵庫県知事が構築した天下り先は現役の職員の有難い優遇処置であり、手放したくない慣例だった。それを壊しに来た佐藤彦摩呂知事は前猪俣歳三兵庫県知事派の議員・職員にとって疎ましい存在だった。綿世康秀西播磨県民元局長もその一人だった。
綿世はむかつく感情を公用パソコンに書き殴っていた。人事課の立場で得た職員や関係者から見たり、聞いたりしたパワハラやおねだり、人事に関する不満など噂話に尾鰭はひれを付け足し、憎しみを込め、書き溜めていた。
事の真偽など、どうでもよかった。佐藤知事の人間性を貶め、評判を悪化させ、指揮力を低下させれればよかった。個人的な鬱憤晴らしが有力な職員OBに紹介された武中秀秋県会議員によって予想だに出来なかった方向に進み始めた。武中秀秋から佐藤知事を貶める材料を求められたが確かなものがあるわけではなかった。強く攻められた綿世は、「こんなものはあるんですが…」と自らが綴った佐藤知事醜聞記を武中に見せた。武中はそれに目を通すと目を大きく見開き、右口角を微妙に吊り上げた。武中は綿世から預かった文章を訴え文のように端的にまとめ、悪事を首謀した人物像を付け加えた。
後日、綿世は、武中から改竄された文章を受け取った。
武中「これをマスコミや警察に送り付けろ」
綿世「これをですか」
武中「職員OBには口利きできるマスコミもある。マスコミが騒げば、警察も動くか
も知れない。マスコミにとっても利権的に佐藤知事は好ましくない相手だ。あ
ることないことで騒ぎ立てるだろう。奴らなら証言者を偽造してでも話題を膨
らませるだろう。何も知らない世間が騒げば、不信任案を提出し、全会一致で
佐藤知事を葬ることができる」
綿世「そんなことが可能なのですか」
武中「可能ではなく、やり抜くんだ。閉ざされたあなたの未来に光が当たるぞ」
綿世「そうですか、やります、是非やらせてください」
武中「じゃ、直ぐに動いてくれ」
綿世「はい」
綿世は直ぐに文章を複製して関係機関に配布した。
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