第二話
翌朝、教室の中はやけにうるさくて、すんごい寝起きの頭に響く。うるさいわボケェ!
そして時々飛んでくる「転校生」という言葉。
やっぱ、皆転校生楽しみなんだろーな。
まぁ吹奏楽部が取らせていただきますけどね!ふん!!
「おーい着席しろーー」先生がホームルーム前に教室に入ってきて、全員揃っているかの確認をしている。
「よし…全員揃ってるな。知ってるとは思うが、このクラスに転校生がきた。拍手で迎えてくれ。」
転校生は少し戸惑いながら教室に入ってくると、微笑み、教室を見渡した。
【皆さんはじめまして。東京から来ました。
そう名乗った転校生は、茶色がかった髪を後ろでふんわりと結った、糸目で優しげな雰囲気の美少女だった。
「それじゃあ、あと2年間、天野さんと過ごすことになるからよろしくな。天野さん、あそこの席についてくれ。」
私の隣には空席が一つ。もしかしなくてもヤッターー!!
天野麗華さんは、3つ前の陰キャ男の隣に座った。畜生。
「それじゃあ、日直!」
きりぃーーつ
きをつけぇーー
おはよぉございまぁーーす
間延びした挨拶が教室に響いた。皆吹き出しそうだったけど、私はご機嫌斜めなので笑いませんよ。ふん。
昼休み。転校生はやはりクラスメイトに囲まれている。私は絶対に行かん。行ってたまるか。
「吹奏楽部かぁ…なんの楽器やってたの?」【ファゴットっていう、ちょっとマイナーな楽器やってたんだ〜】
「あ!響けユーフォニアムの喜多村来南がやってたやつだ!」【知ってるの?】「うん!アニメ好きでさ、片っ端から有名どころ見てるんだ〜!」【そうなの!?嬉しい〜!】
ふん。コルネットなんて一回も通じたことないもんね。
ふん!!!!
【あの…〇〇さんですか?】「ふぇあ?」廊下で突然後ろから声をかけられ、素っ頓狂な声が出た。
「あぁ、天野さんですよね。ファゴットの。」【はい!覚えててくれたんですね!】「まぁ、はい。」
【吹奏楽部だって聞いて、私も吹奏楽部なので…音楽室まで一緒に行ってほしいんですよね】
「ああ、いいですよ」
【〇〇さんはなんの楽器なんですか?】「コルネットです」
【すごい!コルネット専門の人なんて初めて見ましたよ!大編成なんですか?】
「あ、いえ。お金が無くてトランペットが買えなかったんです。」「oh…」
【コルネットだけは買えたんですね…】「いえ、地域の楽団の方から「使わないから」ってもらいまして。」
【なるほど…他にはなんの楽器がいるんですか?】
「えーと…アルト、クラ、ピッコロ、ホルン、コルネット、パーカス、バストロンボーン…ですかね。」
【フルートは…】「居ないです」【低音楽器は…】「…強いて言うならバストロンボーン?」【サックス…】「アルト一本です」【oh…】「ですよね〜…まぁ、だから低音楽器が来てくれると嬉しいんですよね。きっと部長も喜ぶと思います。」【なるほど…】「...なんかすみませんね。こんなお遊び吹奏楽で。」【あぁいえいえ!全然、吹奏楽は楽しむもんなんで!楽しければおーけーです!】
「それならいいのですが…あ、音楽室つきましたよ」【ありがとうございます!…その、よかったら麗華って呼んでください!タメ口でもいいですよ!】「わかりました。…じゃあ、麗華、これからよろしく」【うん、よろしくね〜】
音楽室の重い防音扉を開けた。
【こんにちは〜】
…誰も居ない。
【いつもこんなにすっからかんなの…?】
「いや。今日部活休みだからだよ」
【あ】
【早く言ってよ〜〜!!️!】
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