第24話 メイドたちの癖
「そうだったんだ。『家電量販店』に裏方さんがいたんだ」
俺はカグヤからカグヤが裏で色々としてくれていたことを聞かされた。
アニメやラノベだと、この手のギフトは自動発注がかかっていたから、『家電量販店』もそういうものだとばかり思っていた。
まさか、毎日そのサポートをしてくれていた人がいたなんて。
俺は申し訳なさから眉を下げてから、カグヤを正面から見つめる。
「えっと、今まで気づけなくてごめん。それと、ずっと支えてくれてありがとうね」
「っ」
俺がそう言うと、カグヤは一瞬言葉に詰まって、目から一筋の涙が流した。
あ、あれ? 何か気に障るようなことを言ってしまったのかな?
「カグヤ?」
俺がカグヤの顔を覗き込もうとすると、カグヤは両手で目元をぐしぐしっと雑に拭きながら続ける。
「その、別に、そのことは気にいしないでいいからさ。そ、それよりも! ここ最近全然帰ってこなかったみたいだけど、どこ行ってたの? 寂しかったんだけど!」
カグヤはそう言うと、頬を膨らませて俺に睨むような目を向けてきた。
しかし、本来は思っていなかった言葉なのか、またすぐに顔を赤くさせてしまった。
やっぱり、言動が『オタクに優しい明るいギャル系メイド』に引っ張られているのか。
でも、言葉を否定しないということは、そこまで的外れなことは言ってはないのかな?
俺はそう考えて、『家電量販店』を見渡す。
確かに、この『家電量販店』で一人で数日過ごすというのは、結構来るものがあるのかもしれない。
しばらくの間空けていた理由をはした方がいいだろう。
「えーと、これもどこから話せばいいのかな」
俺はそこまで考えから、ここ数日の話をカグヤに話すのだった。
「なるほどね。そんなことがあったんだ。さすが、ご主人様。まさか、国を建てようとするなんて思いもしなかったなぁ」
俺たちは寝具売り場から少し離れて、家具売り場にあったダイニングチェアーに座って、これまでのあったことをカグヤに話した。
俺の正面に座るカグヤは、これまでの俺たちのこれまでの日々を楽しそうに聞いてくれた。
「そうなんですよぉ。戦う旦那様、かっこよかったです! ……それに、恥じらう旦那様、可愛かったです」
そして、俺の隣ではアリスが俺の活躍をべた褒めしていた。時々小声で何かを呟いて顔を赤く染めているのは、なぜだろうか?
俺が知らに所でアリスが何かドジをしていて、そのことを思い出しているのかな?
「それで、これからどうするのかな?」
俺がアリスの顔を見ていると、カグヤがテーブルに置いていた俺の手をツンツンとしてきた。
俺は顔を上げてカグヤを見ようとしたが、前かがみになっているカグヤの胸元にどうしても目線が言ってしまった。
胸元がちらちらと見えちゃってるんだよなぁ。これって、指摘した方がいいのだろうか?
「……ご主人様に恥ずかしいところ見られて、っ」
すると、今度はカグヤが何か独り言を漏らして息を荒くしていた。
な、なんだ。一体、俺の周りで何が起きてるんだ?
俺はなぜか恍惚な表情をしている二人を前にして、ただ疑問符を頭に浮かべていた。
あれ? というか、何か重要なことを忘れているような……
「あっ、そうだった。ラインさんたちに便利な家電とかを持っていこうと思っていたんだ!」
俺は『家電量販店』に戻ってきた本来の目的を思い出して、椅子から下りた。
すると、しばらくトランス状態に入っていたようなアリスがハッと気づいて顔を上げた。
「そ、そうでしたね、旦那様。えっと、寝具と水洗トイレを運ぶんでしたね!」
「え? 寝具運ぶの? 結構重いと思うけど」
アリスの言葉を聞いたカグヤはそう言うと、近くにある寝具売り場にちらっと視線を向けた。
そこには俺が普段使っているベッドの他に、数個ベッドがあったり、布団があったりした。
確かに、ベッドも布団も持っていくのは結構重そうだ。
俺はふむと考えてから続ける。
「とりあえず、水洗トイレの仕様変更を済ませたら、ラインさんたちに取りに来てもらおうか。結構長く話してたから、野営の支度も終わってるかもしれないし」
ラインさんたちは『家電量販店』に入ることを躊躇っていたが、重いから運ぶのを手伝って欲しいと言えば手伝ってくれるはずだ。
寝具類は仕様変更をしなくても大丈夫だろうし、俺がやるのはこの世界でも使えるように、水洗トイレを仕様変更するくらいだな。
「それじゃあ、俺は水洗トイレの方に行ってくるから、二人はラインさんたちに声をかけて外に運ぶの手伝ってもらっておいて」
「了解です、旦那様!」「任せてよ、ご主人様!」
俺は二人が了承したのを聞いてから、一人でトイレ売り場へと向かって水洗トイレの仕様変更を行ったのだった。
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