第17話 魔物の接近


「それじゃあ、『家電量販店』まで移動しましょうか」


 俺とラインさんは共に建国を目指すことを決めてから、今後の計画を話し合った。


 その結果、食糧や設備などが揃っている『家電量販店』を中心に生活基盤を整えた方が良いだろうということになり、『家電量販店』まで移動することになった。


 『家電量販店』を移動できれば良かったのだが、『家電量販店』は一度構えた場所から動かすことはできないみたいだった。


 こういう店舗型のギフトを貰ったアニメとかラノベでは、好きな所に移動できた気がするのだが、どうもテンプレ通りにはいかないらしい。


 歩いて移動するのは距離があるが、さすがにこの人数を運べるだけの移動手段はない。


 俺たちだけ先に『家電量販店』に戻っても良かったのだが、その道中でラインさんの仲間たちが魔物に襲わる可能性もあるので、一緒に『家電量販店』に向かうことにした。


 本来、『死地』には魔物が住み着いてはいないのだが、迷い込んだりする魔物もゼロではないし、ラインさんたちを襲った魔物がまだ近くにいるかもしれない。


 もしかしたら、ランドセルに入れてきた仕様変更した武器たちのお披露目になるかもしれない。


 俺はそんなことを考えながら、ラインさんたちと共に草木も何もない『死地』を移動いていくのだった。


 しばらく歩いた後、ご飯を食べながら休憩していると、自動清掃モードにしておいていたお掃除ロボットからぴこんっという音が聞こえてきた。


『標的を確認しました。魔物を五体確認』


 パッと目の前に現れたウインドウを見て、俺は食べていたご飯を置いてお掃除ロボットが見つめている先を見る。


「魔物か……ご飯の匂いに釣られてやってきたのかな?」


 俺がボソッとそう言うと、ラインさんが俺の言葉を聞いて慌てて腰を上げる。


「ま、魔物ですか⁉」


 そして、ラインさんの言葉を聞いたラインさんの仲間たちは小さな悲鳴を上げたり、慌てだしたりとしはじめた。


 少し前に魔物に襲われて壊滅しかけたのだから、そんな反応になるのも当然か。


 俺はそう考えながら、みんなの方を見ながら声を張って続ける。


「慌てなくて大丈夫ですよ、みなさん。ここは俺に任せてください」


 俺がそう言うと、ざわつき出していたラインさんの仲間たちの声がピタッと止まった。


 それから、ラインさんの仲間たちは顔を見合わせて頷いている。


 まさか、ここまで俺を信頼していくれているとは。


 どうやら、窮地を助けたということで、俺のことを結構心配してくれているのかもしれない。


 俺はそんな人たちに小さく笑みを浮かべてから、ランドセルから二丁のエアガンのハンドガンを取り出して、お掃除ロボットに両足を乗せた。


「『空移動』モードに変更」


 俺がそう言うと、お掃除ロボットは俺を乗せたままフワッと浮き上がった。


 初めての実践だけど、ここで負けるわけにはいかない。


「よいしょっと」



 俺が緊張から乾いた喉を唾で潤して、お掃除ロボットに前に進む命令をしようとしたとき、すぐ近くでマイペースな声が聞こえた。


 俺が振り向くと、そこにはデッキブラシを背負って、特定小型原付に乗っているアリスがいた。


「アリス? えーと、もしかして、アリスも一緒に来る気?」


「もちろんです! 旦那様を守るのがメイドの役目ですから」


 アリスはそう言うと、ふんすっと鼻息を吐いて気合を入れていた。


 普通、メイドって主人のお世話をするのが役目なのでは?


「いや、アリスは危ないから残っていてよ」


「ダメです。旦那様が行くのなら、私も絶対に行きます」


 アリスは胸元で小さくバツマークを作って、首をふるふると横に振っていた。


 どうやら、アリス全く折れる気がないみたいだ。


『標的接近中、標的接近中』


 俺はまた表示されたウインドウを見て、諦めるようにため息を漏らす。多分、これ以上押し問答をしていても仕方がないだろう。


「分かった。でも、危ないと思ったらすぐに逃げるんだよ?」


「はい。大丈夫ですよ、旦那様!」


 アリスはニコッとした笑みを俺に向けてから、特定小型原付のアクセルに手をかけて、どこか自信ありげに続ける。


「私が旦那様をお守りするので!」


 そんないつも通りのアリスの表情を見て、俺は微かに緊張がほぐれたような気がした。


 少し情けない話だけど、アリスがいてくれた方が安心する。


「……じゃあ、無理をしない程度にお願いしようかな」


 俺は口元を緩めてアリスにそう言ってから、お掃除ロボットの上でぐっと踏ん張って体重を前に乗せる。


 それから、俺はラインさんたちの方に振り向いて続ける。


「それじゃあ、行ってきます。魔物を倒してくるので、少し待っていて下さい」


 俺はラインさんたちにそう言い残し、お掃除ロボットに乗って空を飛びながら魔物の元へと向かうのだった。



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