第13話 大容量はいる魔法鞄と言えば

時は再び、メビウスがラインに身の上話をした後に戻る。


「ラインさん、悪い人じゃなさそうですね」


「そうだね。あそこまで親身になってくれると思わなかったけど」


 俺はラインさんに自分の身の上話を少しした後、アリスと共に『家電量販店』に戻ってとある物を取りに来ていた。


 ラインさんに俺がアストロメア家から追い出されて、ここで生活をしていることを告げると、『こんな子供を『死地』に捨てるなんて……』と怒りに震えていた。


 どうやら、ラインさんは正義感が結構強い人なのかもしれない。初めて会った人のために怒れるなんてなかなかできることじゃないよね。


 俺はそう考えながら、ちらっと監視カメラの映像を映している液晶に目をくれる。


 ラインさんは監視カメラで見られていることに気づいていないのか、地面に座って俺たちが渡したラインさんの分のレトルト食品を掻きこんで食べていた。


 これからラインさんには、村の人たちの所まで俺たちを案内してもらう必要がある。だから、少しでも力が付くようにと思って、俺たちが出かける準備を済ますまでに食事をとってもらうことにしたのだ。


できれば、「『家電量販店』の中で食べて欲しかったのだが、ラインさんは服が汚れているからという理由で頑なに入ろうとしなかった。


 あまり長時間待たせるのも悪いし、パパっと準備を済ませてしまおう。

 

「お、あれか」


 アリスに案内されながら目的のモノがある場所に向かうと、そこには昔よく見たモノが数種類置かれていた。


 俺はそれらを見ながら小さく頷く。


「やっぱり、電気屋に売っていて、頑丈でたくさん入る鞄と言えばランドセルだよね」


 俺はいくつか並ぶランドセルの中から黒色のランドセルを手に取り、ニッと笑みを浮かべる。


 これからラインさんの仲間たちの所に、大量の食糧を持っていかねばならない。


 そうなると、その食糧を運ぶための鞄が必要にある。しかし、ここは家電量販店。家電量販店に売っている鞄と言えば、やっぱりランドセルだろう。


 それに、ランドセルは頑丈で大容量が売りだ。これを仕様変更させれば、きっと多くの食品を安全にまとめて移動することができるはず。


 もしかしたら、この『家電量販店』の物を何でも収納できるかもしれないな。


 俺はそんなことを考えながら、黒色のランドセルを置いてから優しく撫でる。


 すると、お掃除ロボットの時などと同じように仕様変更のウインドウが立ち上がった。


『仕様変更しますか? Yes/No』


 俺はさっきまで考えていたことを頭で反芻しながら、『Yes』の部分をタップした。


 すると、黒いランドセルがカッと光り、ぼふっと白い煙に覆われた。しばらくして煙が消えていくと、そこには仕様変更前と変わっていないような黒色のランドセルがあった。


「見た目は変化なしか。それじゃあ、中身がどうなってるか見てみようかな」


 俺はランドセルの中に手を入れて、どのくらい中が広くなっているのか確かめる。


「あれ?」


「旦那様。どうされたんですか?」


 俺がランドセルを持って中に手を入れていると、アリスが後ろから俺に抱きつくようにしてランドセルの中を覗いてきた。


 俺はそんなアリスにも見えるようにランドセルの中を見せる。


「あれ? 底が見えませんね」


「そうなんだよね。これ、どうなってるんだろ?」


 いくらランドセルの中に手を入れて底を探しても、底に手が付くことがない。


 俺は目をぱちぱちとさせてから、持っていたエアガンのハンドガンをランドセルの中にしまってみた。


「あ、しまったものはすぐ見つかるんだ……なるほど、そういう感じか」


 俺はランドセルからエアガンのハンドガンを取り出して、ほぅと感心するように声を漏らす。


「これあれだ。よく異世界物のアニメとかラノベで出てくる魔法袋とかいう奴だ」


「え? そんなに便利なものなんですか?」


 俺の言葉を聞いて、アリスは目を丸くしていた。


 まぁ、異世界物のテンプレを知らない人からしたら、そんな物理法則を無視したようなものがあるわけがないと思ってしまうだろう。


 多分、これは色々詰め込めて、取り出すときは簡単に取り出せるというアイテムボックスみたいな感じの奴だと思う。


 俺の理想通りに仕様変更できるというのなら、それで間違いない気がする。


 よっし、これならたくさんの食糧を一気に運べるはずだ。


「アリス。地下に行って必要な飲み物と食べ物とかを詰め込もう。あとは、必要そうな家電も少し入れていこうか。それで、早くラインさんと合流だ」


 いくら本人がいいと言っても、いつまでも人を外で待たせるのはよくはないだろう。


 俺はそう考えて、アリスと共に必要な物を詰めんで、入口にいるラインさんの元へと急ぐのだった。

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