VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第41話 僕とアリサはコミュニケーションに失敗して、ダウンする
第41話 僕とアリサはコミュニケーションに失敗して、ダウンする
「どんだけキルしてたんだよ……。相変わらず半端ないな……」
「ふふん。凄いでしょ。カズがザコ過ぎてすぐ死んじゃったから、代わりに頑張ってあげたの。感謝してもいいよ。頭なでなでする?」
隣にやってきたアリサは相変わらず生意気な声だが、息が微かに荒い。
「はいはい。感謝、感謝」
リアルだとできるはずもないが、僕はCGのアリサの頭を撫でてあげた。
ごつい顔だと思っていたけど、こうしていると、意外と可愛いな……。
「むー。ぜんぜん、感謝してない! カズのくせに! あっ! うんこ投げて! 外の右!」
「うんこ?」
うんこって何?
外の右ってどこ?
「うんこはうんこでしょ! ポンポンで狙ってる!」
「え、いや、なんのこと?」
敵が屋内に進入してきたってことだよ、な?
部屋の外にある廊下を確認しようとした瞬間、反対側の壁が爆発。
爆風に巻きこまれて僕のライフが半分近く削られた。
「あ、ポンポンってグレネードランチャーのことか!」
そうだ。たしか、装甲車の上に乗っている兵器って、撃つときに『ポンッ!』て音がするから、ポンポンって呼ばれているんだった。
なら、外は部屋の外ではなく、コテージの外か!
「たまたま!」
「うん!」
たまたまは分かる。弾丸だ。
復活直後の僕と違って、生存し続けているアリサは弾を使い果たしているのだ。
僕は敵の死体から集めておいた、スナイパーライフル用の弾丸をアリサに向かって投げる。
アリサの状況を考えて、ようやく先ほどの言葉の意味を理解した。
「うんこって、手榴弾のことか!」
他ジャンルのゲームと同じように、FPSにも独自の俗語や造語が存在する。
対戦車地雷ひとつにしても円盤状をしているから、ピザ、たらい、マンホール等と様々な呼び方がある。同じように、手榴弾にも複数の呼び方があるのだ。
「アリサ、グレ投げるから、入り口固めて! 3、2、1――!」
敵が突入してきているはずだから、僕は階段に向かって手榴弾を投げる。
「ゼ、ロォ?!」
手榴弾はアリサの腰に当たった。なんで前に出てきたの?!
「アリサ、早いよ!」
「カズが遅い!」
跳ね返った手榴弾は僕の足下に転がってきて爆発した。
死んだ……。
弾丸は味方にダメージが入らないが、地雷や手榴弾やRPGのような爆発物は味方にもダメージが入るため、僕は自分で自分を殺してしまった。
完全に連携ミスだ。
うんことポンポンの意味が分からなかったり、攻撃のタイミングを間違えたり……。
いまさらこんなミスをするとは思いもしなかった。
30秒が経過し、僕は再び、アリサの背後に再出撃した。
再出撃と同時に、バチュンッバチュンッと発砲音が至るところから聞こえてくる。
アリサは一階を走り周りながら敵と戦っているようだ。
「カズ、敵!」
「あ、うんっ」
返事はしたけど、敵がどこにいるのか分からない。
Sinさんだったら僕の視線を基準にして、方向と距離と目標の特徴を伝えてくれる。
けど、アリサは――
「右、右ッ!」
「いないよ! どこ!」
「だから右でしょ! Fuck!」
向かいあった状況で右と言われたから左を見たのに、敵がいない。
背後から弾が飛んできたということは、アリサが気を利かせて僕基準で方角を指示してくれたか、右と左をまた間違えたらしい。
「隣の部屋!」
「どっち?!」
ドアは2つあるけど、どっちの隣?!
それに、隣の部屋に移動するのか、隣に敵がいるのか、なんなのか分からない。
制圧ゲージが敵側に移動し始めた。コテージには敵の方が多い!
僕とアリサはお互いにフォローできる位置で協力しているんだけど、アリサの指示が曖昧で、どの目標を攻撃すればいいのか、いまいちはっきりしない。
ふたりとも辛うじて生き延びているが、制圧ゲージはどんどん減っていく。
「カズ、ここ、もう駄目。あっちに移動するよ!」
「うん」
あっちがどっちを指すのか分からなかったので、僕はアリサの後ろを追いかけることにした。
すると、先を走るアリサがコテージを出る瞬間、撃たれた。
「Fucking Shit! カズが私を囮にしたーッ!」
叫びを残しつつ、アリサの操作していた兵士が倒れた。
安全地帯に運んで救急キットを使えば助かるかもしれないけど、アリサのことはいったん、放置。
救助中の隙を狙われたら僕まで死にかねない。
僕は足下に最後の手榴弾を落としてから、コテージの外へ離脱。
直後爆発し、僕を追撃しようとしていた敵2名を倒した。
同時に、右側にいる、アリサを撃ち殺したであろう敵を撃ち殺す。相手はリロード中だったらしく無抵抗だった。
「今から救急キットまくから!」
玄関周辺に敵はいないと判断し、アリサに救急キットを使用する。
なんで救急キットを使用することを「まく」と言うのかは分からない。巻く、撒く、蒔く……どの意味なのかも分からないが、みんな「まく」と言ってる。
「あっ!」
アリサが立ちあがると同時に、奥の部屋から出てきた敵がショットガンを発砲。
「Nooooo! Fucking Shit!」
運悪く、復活した直後のアリサに命中。
復活直後で体力の少ないアリサは再びダウン。アリサが肉の盾になったから僕は無傷……。
僕はサブマシンガンを連射し、アリサの仇を討つ。
安全を確認してからもう一度アリサを生き返らせる。
すると、ホント、運が悪いことに……。
いや、マジで僕は敵がいないことを確認したよ?
コテージ内でリスポーンしたであろう敵がいきなりやってきてアリサを背後からナイフで切った。
アリサは再びダウン。
僕はサブマシンガンで敵の頭部を3連射して仕留めた。
それから再びアリサを蘇生する。
「えっと……。ごめん……」
「……」
アリサはナイフを構えると僕に斬りかかってきた。
ナイフは味方にダメージは通らない。ズシュッという鈍い音だ何度も鳴り続ける。
ストレス発散だろう。
「すまぬ……」
「あとで、アリサの言うこと聞いてくれたら許す……!」
「あー。宅配ピザ(地雷の敷設)でもウーパー(医療キットの配布)でもするよ」
こうして僕達は何度も連携に失敗したが、なんとかコテージを制圧。
脚の速いアスリートを相手にして屋内で苦戦しつつも、ふたりで死守し続けた。
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