第39話 アリサはまたナイフ持って走り出した
移動の鉄則!
敵の位置と視界を想像して、自分の姿が見つからないように有利な位置を取ること!
「アリサ。走るのつらいから言うわけじゃないけど、ちょっとスピード落とそう。道と森のギリギリ境界を行こう。撃たれてもすぐに隠れられる」
「本当は?」
「敵拠点に着く前に疲れそうだから、体力温存させて」
「りょっけー!」
僕とアリサは速度を落とし、木を盾にしながら前進する。
敵拠点手前の三叉路に到達したが敵はいない。道路も確認していたんだけど、地雷は落ちていなかった。警戒しすぎかもしれないが、油断するよりかはいいだろう。
僕達は適度にスティック操作を交えつつ、拠点Aへ向かう。
暫く進み、拠点Aを攻めている敵の背面を捕捉した。
リアル疲労が限界に達していた僕はその場に留まって交戦することにし、立ち止まり銃を構える。
しかしアリサは止まらず走り続ける。
元気だな、おい!
あっ、ああっ……!
アリサがナイフを持ってる! あいつ、またナイフで仕留めるつもりだ。
第1ラウンドでナイフキルをしたのが楽しかったんだ!
敵は背後を警戒していないから隙だらけなのに、僕は撃てない……!
僕が発砲したら敵が振り返ってアリサに気づいてしまう。
敵は拠点Aのコテージに接近。木製の低い階段を上がり、1階玄関へと入っていく。
アリサも追いかけてコテージにエントリー。
「はあはあ……。待って……」
息を切らしてヘロヘロだけど、アリサをひとりにするわけにはいかないから、僕も突入。突撃馬鹿のケツは僕が護らないと……。
2階から走り回る音がする。階段、上りたくねえ……。
……まあ、アリサならなんとかしてくれる、と信じよう。
僕は追加の敵が来ないように1階玄関を護ることにした。はあはあ……。階段の下にあるスペースに隠れ潜もう。
僕がここにいることによって制圧ゲージが動くし、アリサが死んだとき、僕の隣から復活できる。
だから、これはけして、疲れたから休んでいるだけでなく、ちゃんと戦術上意味のある待機なのだ。はあはあ……。
僕はキルログを眺めつつ、聞き耳を立てる。ほんと、元気に走り回ってる……。
小学生って走るの大好きだよなー。って、小さいから小学生っぽいけど、アリサは中学生か。
発砲音が聞こえる。アスリートチームが撃っているんだろうけど、マシンガンっぽいな。射撃準備のモーションが大きいから、狭い部屋だと使いにくいと思う。
シールドでオブジェクトを叩いたような音も聞こえる。
アリサが装備しているスナイパーライフルの音は聞こえない……。
しばらくして2階が静かになり、アリサが1階に下りてきた。
「カズ。2階クリアしたよ」
アリサがナイフを振り『これ1本で4人、仕留めてきた!』とアピールしてくる。
「すげえ……。絶好調だね。チェックシックス!」
アリサの背後に敵兵がいきなり現れた。おそらく屋外から走ってきて、3段くらいある階段を飛び越えてきた。
敵はナイフを構えている!
避けられる位置とタイミングじゃない……!
だが――。
アリサの背中を狙ったナイフは僕の目の前で空振り。
アリサは消えた……と錯覚するくらい、ペッターンと真下に倒れていた。
ナイフに刺されてダウンしたわけではなく、脚を180度開いて、床に落ちていたのだ。何それ、ヨガ?!
真下からアリサが攻撃したらしく敵が怯んだ。同時に僕がライフルを胸に撃ち込んで仕留めた。
「ナイス、ヨガ」
「お兄ちゃん、いきなりセッ、ピーッ、って叫ぶのはどうかと思う……」
「セッピー? なんのこと?!」
「今、敵が来たとき、ファック、セッ『ピーッ』ス! って言ってた」
「チェックシックス! 6だよ。時計盤の6、つまり後ろをチェックしてって。いつもそれで通じていたよね?!」
「お、お兄ちゃん……。配信中だから何回も言わないでよ、も~」
すっごく、可愛らしくもじもじと萌え~って感じの声している。
今のやりとり配信中?!
アリサが僕をお兄ちゃんと呼んでいるときは要注意だな。
「とりあえず、地下に行こうか」
僕は物陰から出て、地下室へ繫がる階段を探すために移動する。
「え~っ? お兄ちゃん、地下に行ってアリサに何するの~? クソザコなのに私にエッチなことする度胸あるの~?」
ねえ、極力善処するけど、こっちは素人なんだからあまり配信のノリにあわせられないからね?
「えっと、ここの地下室から地下通路があって拠点Bに繫がってるから、そこチェックしよ」
「セッ……! しよ?!」
「チェックしよ! ねえ、配信のこと詳しくないけど、そういう発言を繰り返していると、どこかから怒られるんじゃないの?!」
「一般的には、運営に怒られたりYaaTubeからバンされたりするらしいよ」
「ね、だから、やめよ……」
「でも、アリサはお姉ちゃんの健全なチャンネルで一緒に活動する妹Vだから平気!」
「何が平気なの?! お姉ちゃんに迷惑かけちゃ駄目でしょ?!」
「アリサの甘々ロリータボイスでえっちな単語を口にすると、と~っても喜んでくれる大きなお兄ちゃん達がい~っぱい、いるんだよ?」
「……なんて言えばいいのか言葉が出ねえ。……屋内には地下に繫がる階段がないし、外にあるのかも? 洋ゲーの小屋ってなんか地下室への入り口が外にあることが多い気がするし、そういう感じかも」
僕達は家から出るために玄関に向かう。
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