VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
うーぱー(ASMR台本作家)
プロローグ:2年前。女性フレンドとの出会い
第1話 不本意な敗退
VRゴーグルVirtual Studio VRがあれば、自室が戦場になる――。
その日、僕はクラメン(クランメンバーの略)と一緒にミリタリー系VRシューティングゲーム『Battle of Duty Ⅲ』のオンライン大会に参加していた。
3人組の20チームが、最後の1チームになるまで戦うサバイバル戦だ。
(優勝チームは、大会スポンサー企業の運営するプロゲームチームに所属のチャンスが与えられるらしいけど、中坊の僕には関係ない。仲間のために戦えるだけで十分満足!)
試合は終盤。残り4チーム。
(……ん? なんかおかしいぞ)
廃ビル壁面の非常階段3階の位置からマップ中央のビルを偵察していた僕は異変に気づいた。スナイパーライフルのスコープからは目を離さず、無線通信で仲間に呼びかける。
「ユウシさん、ケンジさん。前方の建物、様子が変です」
「どういうことだ。カズ」
「建物内に3チームいるのに、積極的に攻撃しているのが1チームだけです。他は戦意喪失状態というか……」
「何っ? ……まさか、例の噂は本当だったか……。仕方ない。俺達も勝ちを譲るか……」
「えっ?! なんでですか?! 優勝したらユウシさん達はプロチームに所属できるんですよね?!」
信じられない言葉を聞いてしまった僕は声を荒らげてしまった。
「ある女性声優がBoD配信しまくってる廃人プレイヤーで、そのやりこみっぷりがメーカーにまで伝わって、Ⅲのシステムボイスに起用されたって話、聞いたことあるか?」
「いえ……」
「その声優が大会に出るって噂があった。今の生き残りチームがそうだ。最初から出来レースだったんだ……。悔しいが、スポンサーを怒らせるわけにはいかない」
「そんな……。ユウシさん達、めちゃくちゃ練習したじゃないですか……!」
「学生のカズには分からないかもしれないが、仕方ないんだよ……!」
悔しさのにじんだ声を最後に、通信は切れた。ユウシさんはケンジさんとともに前方ビルに突撃し、死んだ。
素人目には真剣に戦っているように見えたかもしれないが、僕の目には明らかにユウシさんが手加減していたように見えた。
ユウシさんのBattle of Duty Ⅲにおけるプレイヤーレベルは92。
オンライン対戦で負けたり死んだりするとレベルが下がる仕組みだから、90以上のプレイヤーはほとんどいない。全世界に1000人いないとさえ言われている。
社会人だから日中は働いているため、最近は大会に備えて真夜中に練習していた。『目が開かねえ』が口癖になるほどだった……。
「こんなの、理不尽すぎる……!」
残り2チーム。正確には、敵チームと僕だけ。
「そうだ! 僕は中学生だからもともとプロにはなれないんだし、僕が敵を倒せばいいんだ! 3対1で不利だけど……!」
僕は非常階段で伏せたまま、ビルを狙って待ち続ける。
敵がひとり、正面玄関から出てきた。そして中庭を通り、門に差し掛かる。
「今だ!」
僕は敵の脚を狙いスナイパーライフルを撃つ。
命中。
敵が倒れた。
すぐにリロードし、同じ敵を照準に捉えたまま待つ。敵は生きているが、敢えてトドメはささない。
……来た!
建物から出てきた次の敵が、最初に倒れた敵の傍らにしゃがみ、救急キットを取りだした。
「喰らえ!」
僕の放った弾丸は、狙い違わずに、ふたりめの頭部を貫いた。即死だから、もう蘇生はできないはずだ。
「よし。これでワンキル! 最後のひとり、出てこい!」
放っておけば数十秒後に最初の敵は死ぬ。
だから最後のひとりは、仲間を救うために出てくるか、仲間を見捨てるか、選択を迫られている。
一方、僕もこのままでは死ぬ。戦場周辺を毒ガスが包んでおり、行動可能範囲は刻一刻と狭くなっている。
(視界が霞んできた。まずい。僕の方が先に毒ガスで死ぬ。前に行くしかない)
僕は倒れている敵に狙撃し、トドメを刺した。
階段を駆け下り、前方ビルの様子を確認しながら路地を走る。
途中でユウシさんの死体そばに落ちていたアサルトライフルを拾い、前方ビルへ向かう。
(敵は玄関を警戒しているよな? だったら!)
僕は玄関手前の中庭にスモークグレネードを投げた。
中庭が煙に包まれるのと同時に、塀を跳び越え、建物を壁伝いに移動。開いていた窓から建物内に侵入。
(敵はまだ玄関を警戒している? 残り時間1分を切った。外に出れば死ぬから、中にいるはず。でも、足音が聞こえない。……分かったぞ!)
僕は手近なドアを開けて室内に手榴弾を投げ入れた。爆音と同時に素早く廊下の窓から外に出る。毒ガスの影響ですぐに視界が歪み、体力が減り始める。
僕は汚染された中庭を横切り、玄関から突入する。
左右を素早く見る。いた。敵だ!
敵は僕の裏をかくために、ギリギリまで毒ガスの充満した中庭で待機していたんだ。同じことをして、僕が裏をとった!
「喰らえ!」
視界が歪んで頭部を狙えないから、僕は敵の背中目掛けてアサルトライフルを発砲。3連射のうち1、2発は命中しただろう。
もう1回、撃――!
ドサッ……。
視界が灰色に染まり、カメラ位置が強制的に切り替わり、僕は自分の死体を見下ろした。『あなたのチームは敗北しました』というメッセージが表示された。
「ガスで死んだ……。間にあわなかったか……」
ユウシさんを優勝させたかった。でも、あと1秒が足りなかった……。
こうして僕達はBoDの大会で敗退した。
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