7.本音 そして__
前回のあらすじ
父の身の上話を聞く。父は生まれ故郷を焼かれ、英雄となって戻ってきた。
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食事を終え、食器を洗う。ソーニャは遠慮したが、話をしてくれたお礼だからと押し切った。
「まだ1歳にもなっていない子に騎士になるか決めろなんて、相変わらずせっかちよね。」
「ええ、ほんとに。」
「シロックは、まあ止めないわよね。あの子は放任主義だし。」
ソーニャは俺の立場に同情してくれているようだ。
「あの2人は自分の才能を見極めて、互いに貢献できるように努力したの。だからあなたのような才能に恵まれた人はそれを生かすべきだと考えているのよ。あなたの場合、騎士じゃなくても大成しそうだけど。」
「父のようになれる気はしませんけどね。」
俺は苦笑いをする。
するとソーニャは声を上げて笑った。サラも笑っている。
「あなた、お父さんが自分みたいな騎士になってほしいって思っているの?あんなのにはならなくていいのよ。騎士っていうのはね別にあそこまで強くなくてもいいの。ただ、人の上に立って守る立場だから、責任が伴うってことを伝えたいだけよ。」
「え、そうなんですか、てっきり騎士っていうのはみんなあんな風に人間離れしているのかと。」
「ご主人様は選帝侯並みに強いって言ったじゃないですか。」
サラが付け加える。
「それに、バランタイン様はご主人以上に才能に恵まれております。生後半年で剣を持つことができ、会話もできるのですよ。ご主人や奥様は自慢げにしておりますが、異常とも言ってもいいのでしょう。能力に関しては申し分ないかと思われます。」
「ええ、そうね。この子も含めてあの城にいる人は全員人間離れしているから、感覚が麻痺しているのかもしれないけど、あなたは稀有なのよ。」
確かにその通りだ。この世界においても子供の成長はアマレットが普通で俺が早すぎるのだ。父を見て恐ろしいと思ったが、俺の成長の方も負けず劣らず異常なのだ。
「バランタイン様、ここだけの話ですよ。」
サラが声を抑えて言う。
「ご主人様はバランタイン様に対して、努めて騎士らしく振舞っております。帝都の貴族のような言葉の使い方をしておりますし、先日一緒に拝見した森の民との戦闘も普段とは違う派手な戦い方をしておりました。もちろん戦術的にはしっかり練られていたのですが、普段ならメイスなど使わず剣で戦っていたでしょう。」
えっとそれはつまり__
「かっこつけてたってこと?」
サラは頷き、ため息をついた。
「恐らくですが、ご主人様は『お父様のような騎士になりたい』と言ってほしいのだと思います。あと数日で騎士になるかどうか決断を急かされるのは、そろそろ化けの皮が剝がれてくると思っているからでしょう。なんせ、息子の成長があまりにも著しいのですから。」
それを聞きソーニャは大笑いした。
「ご主人様がバランタイン様にいい顔をして、肝心なことを話さないので今日は当家について説明する場を設けさせて頂いた次第です。」
「なるほど。改めてなのですが俺は騎士になるべきなのでしょうか?」
サラにすこしかしこまって尋ねる。
「それはやはりバランタイン様が決めることです。ご主人様の本音は自分が守ってきたこのブランデンブルクを自分に続いて守ってほしい。それだけだと思います。」
なるほど、俺は少し勘違いをしていたようだ。父は俺に、強く高潔で、弱気を助け強気を挫くといったシンボル的・記号的な騎・士・ではなく、職業として騎士になってほしいということを頼んでいたわけだ。
今日の会合はこれにてお開きだ。
ジギルを繋げてある場所に行く。この体は食べるとすぐ眠くなるのが欠点だ。が、穏やかな気持ちはすぐに消え去ることになる___。
俺とサラは本能的に、おぞましい殺気を感じ取った。
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