#4「考案者の変装実験」B

「おじいちゃん。どこでお昼ご飯食べる?」


「そ、そうじゃな〜...」


 さっきの車で町に出たものの、まずは昼食を食べる事にし、店を選ぶ事にしたけど、何もこんな時まで老人になり切らなくても...。


「じゃあお寿司にしようか。お寿司好きだったでしょ。」


「え!?そうじゃったな。お寿司食べようかの...。」


(ねぇ、防子...この時点じゃべつに老人を強調しなくていいんじゃないの。)


(そ、そうだよね...)


(ちなみに何で寿司なの?)


(ご、ごめん...私が今食べたくて...つい//)


(ま...まぁ、別にいいけどね...。)


 顔を赤らめて言うなんて、防子のこういう一面久々に見て懐かしんでいると、一人の女性がこちらに話しかけてくる。


「あれ?防子じゃん。」


「や、柔子ちゃん。」


 その女性は防子より少し身長が高めだが、見た目は全体的にふっくらしていて、愛嬌のある顔をしている。服装も露出が多めであり、アクセサリーもかなりの数を身につけている。


「防子、この娘は?」


「ええと...友達の固山 柔子こやまやわこちゃん...。」


「えっ!?」


「どうも〜柔子で〜す。防子さんのお爺さんですか?」


「そ、そうじゃが...」


「あ、じゃあ私たちもう行くね!それじゃ!」


 何だか急ぐように去ってしまった。防子はそのまま寿司屋に入店して、カウンター席に座った。


(柔子ちゃんって、防子の同級生だよな?随分変わったな。)


(休日だから、あんな格好しているけど、柔子ちゃんも私と同じメイドさんなの。)


 まさかの同業者だった。という事は僕も今後関わるってことなのか。休日はあんな格好しているなんて、メリハリがきっちりしてる…のか?


(でも、一応バレてはいなかったね!)


(いや、そもそもこの町には知り合いはほとんどいないから言われなきゃバレないんじゃない?)


(う〜ん...そうかもね。)


「あら〜。防子ちゃん。」


 すると、隣に座っているカジュアルな服装をした長身の女性がこちらに話かけてきた。


「育鈴さん!奇遇ですね。」


(えっ?また知り合い?)


(この人も私と同じメイドの砂浜 育鈴すなはまいくりんさん。)


 まさか一日で二人のメイドに会うとは...この人も今日は休日なのか?


「そちらは防子ちゃんのお爺様かしら。」


「そうなんです。たまには外食しようかと。」


「えっと、防子がお世話になっております〜。」


(由ちゃん!そんな事言わなくていいよ!//)


(いや、ほら一応身内という体だからさ、こういう事言った方がいいと思って。)


「ふふ、こちらこそ防子ちゃんには助けられています。」


「そうですか。これからも防子の事をよろしくの。」


「はい。こちらこそよろしくお願い致します。」


 何だか上品さを感じる人だなぁ...さっき会った娘とはまるで違うな。こんな事思ったらさっきの娘に悪いか。


(だから由ちゃん!!//)


 こっちはこっちで顔赤くしている。防子がこんなに慌てる姿を見たのは初めてかもしれない。


「では私はこれで失礼します。じゃあね防子ちゃん。また屋敷でね。」


「あっ、はい!また屋敷で。」


 育鈴さんの居た席の皿の数を見てみると、ざっと見て三十皿以上は積み重ねっていた。


(もう由ちゃんったら、恥ずかしいじゃない!//)


(防子...育鈴さんは結構食べる方なのか?)


(えっ?...うわ!すごい皿の数!育鈴さんって大食いだったんだ...)


 あっ...初めて知ったのね。けっこうスリムだったから、人は見かけによらないという事か。



 僕たちは昼食を食べ終わり、店から出る。


「次はどこに行きたい?おじいちゃん?」


「いや、もう変装はいいだろう。」


「え?」


 やはり、知り合いがほとんどいないこの町で変装した所でほとんど意味はない。

 というよりも僕は防子以外はほとんど知り合いがいないから、気付かれる事は現時点ではないだろう。

 今日は彩絵花さんも変装しているとさっき連絡が来たが、あっちは大丈夫か分からないけど、こっちはこれ以上やっていても意味はないと思った。


「じゃあ、屋敷に戻ー」


 その時アリツフォンから警告音が鳴った。表示されたマップには二箇所のマークが点滅していて、能野町と別当町を指していた。

 拳也君に連絡すると別当町にいるとの事なので、別当町は拳也君に任せる事にした。


「防子、お前も一緒に来てくれ...」


「え?いいの?」


「ああ...」


 防子と共に僕はカテラスがいる現場に向かった。



 現場に着くと体がバズーカのカテラスが建物に穴を開けて、人々を困らせた。物騒な奴らだな...。


「よ、由ちゃん、今からアレと戦うんだね。でも私はいない方がいいんじゃ...」


「いや、お前も一緒だ。」


 僕は防子に青色のアリツフォンを防子に差し出した。


「えっ!?わ、私が!?」


 僕は未央理さんに外に出る前にもう一つ話をしていた。

 それは防子を超戦士にする事。未央理さんにこの事を話すと結構あっさりOKしてくれた。幼馴染として一緒にいた僕に一任すると承認してくれていたのだ。


「でも、私なんかにできるのかなぁ...」


「未央理さんにも話してある。それに防子と一緒だったら、僕としても心強いと思っている。お願いできないかな?僕を助けると思って!」


「由ちゃん...そこまで言ってくれるなんて...分かった!超戦士になるね!」


 僕は防子に武着装の手順を教えた。


「まずは、アリツチップをアリツフォンに挿しこんで。」


「えっと、これ?」


[Defence IN]


「そして武着装と言って画面のCERTIFICATIONの文字をタップするんだ!」


「ぶ、武着装!」


[CERTIFICATION. In Charge of Defence.]


 防子の全身に光が纏い、防子は防御の超戦士「アリツシーリア」に武着装した。

 姿は緑色で女性なので胸の形が出ていて、額にシールドのマークが入っている。

 シーリアはバズーカカテラスの前に出る。


「や、やめなさい!」


「あら、誰よあなた?」


「私はあなたを止めるものです!」


「邪魔するつもり?ゴリーク達!こいつをやっつけて!」


 カテラスがそう言うとそこからともなく、ゴリークと呼ばれる白い戦闘員的存在の者達が大量に現れた。


「い、いっぱい出て来た!」


 さすがに初戦でこれは...と思って僕は物陰から見ていたが、シーリアはアリツソードを出して次々とゴリーク達を斬っていった。強いな...


「やっぱりアタシがやるしかないようね。喰らいなさい!」


 バズーカカテラスは大砲を発射したが。シーリアはアリツシールドを出し大砲を防いでみせた。適応力も高い...やっぱり防子を選んで正解だった。


「なっ!?フン!威力が弱かったみたいね。なら最大出力で行くしかないわね!」


 バズーカカテラスは威力を上げる為に出力を溜めて準備をしている。僕はアリツフォンでシーリアに通信を入れる。


「防子。アリツブレイクチップを装填しろ!」


「うん!分かった!」


 シーリアはアリツフォンにアリツブレイクチップを挿し込んだ。


[Break Standby]


「準備完了!流石にこれを喰らってはあなたも終わりよ!」


[Defence Break]


 大砲を発射したその時、シーリアはアリツシールドにディフェンスブレイクを発動させ、アリツシールドはサイズが巨大になり、最大出力の大砲を防いだ。


「な、何ですって!」


 シーリアは再びアリツブレイクチップをアリツソードに挿し込んで、バズーカカテラスの目の前まで近づき、交差に斬った。


「交差斬り!ハイヤァァァァァァ!」


「キャァァァァァァァン!」


 バズーカカテラスは人間の姿に戻り、その場に倒れた。僕は救急車を呼んだ。シーリアは僕の所に戻って来て、武着装を解除して防子の姿に戻った。


「は〜怖かった〜!」


「驚いたよ。まさかあんなに使いこなせるなんて、防子を選んで正解だったよ。」


「そ、そうかな?そう言ってもらえると何だかやれる気がしてくるよ!」


 やっぱり防子は強いなと改めて思った。そして僕達は屋敷へと戻りスーツを脱いでいた。

 言われなきゃ分からないから、変装の効果があったのか分からなかったな…。知り合いがいる訳でもなかったし…


「あ、防子背中のファスナー開けてくれ。」


「うん。」


「痛たた!肌に挟まってる!」


「ご、ごめん!」

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