第3話 出発

ノックと同時に

「シュタイン、入ってもいいですか?」

と、子どものように高い声がした。

「ノヴェルかい?いいよ、入っておいで。」

そう言うと、軋んだドアの音と一緒にノヴェルが入ってきた。

「そろそろ時間が迫ってきています。すでに馬車も到着しています。」

「そうか。わかった、すぐに行くよ。」


「おや、もう行くのかい?」

窓口でそう声をかけてくれたのは宿主、ナーナルドさんだ。

「えぇ、帰りは夕方になりそうです。これからお偉いさんに色々な説明をしに行かないといけないので。」

「そうか。英雄も大変だな。」

するとナーナルドさんは他のお客さんたちに向かって大きな声で

「よっしゃ!そうと決まれば今日の夕飯はごちそうだ!!」

他のお客さんの歓声が上がる。

この人は八百屋に負けないくらい強面だが、サービス精神はきっとこの街一番だろう。

「シュタイン。」

おっとっと。いけないいけない。

「ごめんごめんノヴェル。馬車もまたせてるし行こうか。」


外に出ると美味しそうな匂いが漂ってきた。

誘惑されそうだったから素早く馬車に乗る。

乗ったことを確認して、馬車が動き出した。

すると、あることに気づく。

「ふふっ。ノヴェル、よだれ。」

「あ…!」

「ほらハンカチ。」

「あ、ありがとうございます。」

(……お礼を言えるのはいいんだけど堅いんだよなこの子。)

前まではシュタイン様って言ってたから様を外させるだけでもう精一杯だ。

(しかし………)

ノヴェルをもう一度見る。

「どうかされましたか?」

「いや、大きくなったよなって。」

ノヴェルと会ったときはまだ4歳だった。

「大人の5年と子どもの5年は全く違うもんだね。」

ノヴェルは首をかしげてきょとんとしている。

「俺が寝ていた間どうしてた?寂しくなかったか?」

「寂しくはありませんでした。ナーナルドさんやフェレインさんが世話してくれていたので。」

「そうか。なら、よかったよ。」

ってか俺と過ごした期間の5倍もあいつらノヴェルと一緒に過ごしてんじゃん。

(なんか悔しいな……。)

「どうかされました?」

ノヴェルはまた首をかしげてきょとんとしている。思わず笑みがこぼれた。

「いや、何でもないよ。」



「あ、見えてまいりました。」

馬車から顔をのぞくと、ノヴェルの言う通り、城が見えてきた。

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