第5話 特殊警察
さすがに今の時代に、
「顔のない死体のトリック」
などというものが通用するとは、犯人も思っていないだろう。
実際に、そんな犯罪を犯したとして、できるわけはない。トリックを生かすというよりも、何かの話題性でもあれば分かるのだが、それもやはりおかしな話だ。
とにかく、被害者が誰か分からない。となると、当然、犯人にたどり着こうにも、今のままでは、
「殺人事件」
として、捜査を維持していくのも難しいだろう。
かといって、
「自殺でもなければ、変死でもない」
ということになれば、どうすればいいのか?
警察としても、こんな不可解な犯罪は初めてだった。
ただ、実はこの犯罪には、
「裏」
があったのだ。
これは、捜査陣には知らされていないことであり、警察の中にある、公安との共同捜査となる、特に、
「国際的な犯罪」
であったり、
「犯罪組織」
として、
「警察では手に負えない」
と思われる捜査陣に任されていた。
特に、
「ある種の反政府組織」
というものがあり、この組織は、各国に存在している似たような組織が、彼らなりに暗躍することを目的としたネットワークのようなものができていた。
今回の事件でも、その特殊組織がかかわっているということが、実は、結構早い段階で分かっていたのだ。
それは、初動捜査の段階、つまりは、
「指紋の採取で分かっていた」
といえる。
警察のデータベースから、その被害者の指紋が検出されなかったのは、最初から、
「国際テロ組織の一員」
ということで、その指紋は、
「特殊警察」
を管理している、
「秘密公安部」
にしかなかった。
つまり、
「警察からは削除されていて、秘密公安部にしかない指紋」
ということだったのだ。
その指紋を特殊警察が握っているということで、実際に特殊警察は動いていた。
もちろん、警察すら、その捜査が分からないようにである。
当然、特殊警察が動いているところを、所轄や警察機関が捜査をすれば、特殊警察の邪魔になるかも知れないし、それ以上に、
「反政府組織に気づかれる」
ということになる。
しかし、すべてを消してしまうと、却って相手に怪しまれるので、警察に対して、多少のヒントを与え、少しは、捜査できるくらいにしておく必要があった。
それでも、警察としては、最終的に、
「お宮入り」
ということにしてしまわないといけないのであった。
そういう意味で、今まで、警察の中で、
「お宮入り」
ということで、解決されなかった、
「未解決事件」
というのは、一体どういうものなのかということを考えると、
「どこかに、何らかの共通点があった」
といってもいいだろう。
「そういえば、警察として、どこかから、何かの力が働いている」
というような、違和感があった事件が多かった気がする。
といっても、どの捜査も同じ人がかかわったというわけではないので、
「違和感が複数にまたがっている」
ということはなかったであろう。
だから、警察というものが絡んできた事件は、未解決が多いのだが、それは、
「時効が存在した時代も、今の時効が撤廃された時代も、そんなに変わりはない」
といってもいいだろう。
時効が撤廃されようがどうしようが、変わりはないということは、それだけ、
「時効が近づくような、時間のかかる犯罪は、その時間に比例して、解決されないということになる」
という判断が、捜査員の中で自然と育まれてしまうといってもいいだろう。
「諦めの境地」
といってもいいのかも知れないが、
「事件解決までの士気が落ちるというのは、どうしようもないことだ」
ということになるだろう。
警察が、いかに犯罪事件に絡むというのか、それを考えると、
「今までに、上から、何かの力が働いて、いきなり、捜査打ち切りなどという理不尽なことが多かった」
ということであるが、果たしてそうだったのだろうか?
確かに、刑事ドラマなどでは、政治家であったり、官僚が、警察の上の方に圧力をかけるということで、現場の刑事が地団駄を踏むというような内容が、
「刑事ドラマ」
ということで、視聴率を稼げたりした。
これは、
「ひょっとすると、そういう話にしておいた方が、ドラマとして、視聴率が上がる」
ということで、製作されたものではないか?
といえるかも知れない。
ただ、どこまでが本当で、どこからが、盛っているのかということは、本当に上の方に死か分からない。
逆にいえば、
「警察というのはそういうところだ」
という先入観を国民に持たせるということも、その目的にあるのかも知れない。
そうしておく方が、警察組織としてはやりやすいと思っているのか、それとも、
「特殊警察」
というものの存在をごまかすことができるという考え方からなのか、どちらにしても、警察というものが世間で、どのような認知を受ける必要があるのかということを考える組織が存在するということになる。
それが、
「特殊警察」
をつかさどっているところであるといえるだろう。
「では、特殊警察というのは、どういうことをするところなのだろうか?」
と考えると、
「特殊警察というのは、軍のようなもの」
という話が巻き起こっている。
そして、この組織は、政府の力の及ばないところだとも言われている。
昔の大日本帝国でいうところの、
「日本の軍隊」
というのは、
「天皇の統帥権」
というものの中にあり、それは、
「憲法で決められていることだ」
ということであった。
つまりは、
「陸海軍は、天皇の直轄であり、統帥するものだ」
ということである。
政府は、軍の作戦に首を突っ込むことができないどころか、会議にも参加することができない。
考えてみれば、それは当たり前のこと、二十世紀前半というと、世界が、戦争の機運が高まっていて、アジアが侵略され、ヨーロッパも、侵略だけではなく、戦争の火種がくすぶっていた時代。
日本も、いつ攻め込まれるかということで、
「国防」
というものは、真剣に考えるものであった。
だから、世界は、諜報活動のようなスパイが横行していて、日本にも実際にいたというではないか。
だとすれば、
「日本の考え方や軍の動きが世界にバレれば、あっという間に日本は、他国の植民地となってしまう」
ということになる。
だから、天皇直轄ということで、他の国による、
「諜報活動」
というものに、引っかからないようにしないといけないということであった。
それが、戦後の今の時代にも息づいていて、敗戦によって、占領軍に、
「日本の民主化」
というものが進められ、日本では、表向きには、
「政府による民主化」
が進んできた。
しかし、それだけでは、今の日本はなかっただろう。
その、
「裏の組織」
として、暗躍してきたのが、
「秘密公安」
であったり、
「特殊警察」
と呼ばれるものであった。
それが、
「日本の表と裏」
というものを支えてきたのである。
まったく正反対と思えるような国家体制であるが、それが、今の時代の日本を形作っている。
実際に、今の日本は、ボロボロだといってもいいだろう。
政府によって、利権であったり、好き放題に国民を自分たちの儲けの道具ということにして、
「亡国に誘っている」
といってもいいだろう。
だが、いずれは、特殊警察の手で、日本という国を正しい国にしようという暗躍がされる中で、表の警察が、
「未解決」
ということで解決できなかった事件は、
「裏の警察」
つまり、
「特殊警察によって、片付けられている」
といってもいいだろう。
ただ。最近、
「特殊警察なるものが存在している」
というようなウワサが、警察内部にもあったりする。
醸造部は、
「そんなバカなことはない」
といって、火消しに躍起だが、実はこのウワサは、
「秘密公安」
の方から出されているという話もあるようだ。
「いよいよ、国家というものを、我々が何とかする時代に近づいてきたか?」
ということであろうが、逆にいえば、
「そろそろ動かないと、今の政府に任せてはおけない」
ということであったりするのだ。
「今の腐り切った政府に、これ以上任せておけば、亡国は必至だ」
ということである。
国家の存亡をかけた、
「プロローグが始まった」
といってもいいだろう。
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