第3話 ホームレスのごはん





どんなに貧しくても

家があった



その日々のご飯は

質素 極まりない



お風呂とトイレは

いつでも使える



眠るための

布団がある



街を彷徨い

歩き疲れて



しゃがみ込んでも

私に

手を差し伸ばす人は

いない

この街には





夜の喧騒のなかで

ダンボールを拾い

コンビニのビニール袋から

一本の缶を取り出す

今夜の食事



無料の個室シャワー

ボランティアの人がくれる

おにぎり

冷めていても

心に染み入る



図書館の空調に癒されて

ベンチに座るおじさんと

世間話



昼間は優しい

夜は孤独との闘い



隣人からの差し入れ

ちいさな助け合い

もらった

たばこを

大切にする




あの深夜バスに乗れば

すぐに帰れる

なぜ

そうしないのか

質問されても困る

帰れるけど

私の場所はないから




お姉ちゃん 助けて

お兄ちゃん 助けて

お母ちゃんに 会いたい



お父ちゃん 生き返って




私の声は

何年も届かない

家にいるのに

あの街のホームレスと共にある



お風呂をやめた

トイレは最低限

食事は気づいたときだけ



生きながら

死んでいる



あの街の

ホームレスの人と

同じ私



それは

気分が回復して

生活が180度変わっても

私の心のなかに

確かにある



捨てられた人々にも

生きるひかりがある

私は

いま

彼らに

マフラーを編みつづける




少しでも

こころが温まるように


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