それでも愛をつぶやいた

巴瀬 比紗乃

第1話


「好きだよ」

「俺も、好きだよ。だけど」


 ハルトはケイスケの口を、人差し指で塞いだ。


「”だけど”は、いらないよ」


 ケイスケは寂しげに笑って、2度小さく頷いた。

 

「…分かった」


 ホテルを後にする。

 最後の最期。

 どちらからともなく、手を繋いていた。


「ありがとう」

「こちらこそ」


 離れていく手に、未練がないわけじゃない。

 それでも、2人の間に、後悔はなかった。

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それでも愛をつぶやいた 巴瀬 比紗乃 @hasehisa

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