武器の価値が無い武器化人間はパートナーが居ない、なので一人で戦う事にしたら何時の間にかパートナー希望のヒロインが増えて来た。主人公だけ使える強化素材が敵から回収出来るのでそれを使って無尽蔵に強くなる。

三流木青二斎無一門

これがこの世の摂理

此の世は女尊男卑である。


「あー、疲れた、椅子」


女子生徒がそう呟けば。


「はいッ!」


周囲を囲む男子生徒の一人が膝を突いて椅子となる。


「おい、戦処女神セイヴァルキューレ様だ、頭を下げろ!」

「は、はいッ!」


廊下を通るだけで、男子生徒は足を止めて頭を垂れる。


「は?なんでコイツ、頭を下げて無いの?」


女子生徒が目を光らせる。

それだけで、友人だった男が保身の為に頭を下げるのが遅れた男子生徒を殴り倒すと言う状況。

この世界では、それが当たり前なのだ。


目を奪われる程の絶世の美女達。

絶え間なく湧き続ける無限の財源。

何よりも、彼女達は男達よりも強かった。

それが、この世界の平和の調停を築く存在…戦処女神セイヴァルキューレと言う存在であった。


「このッ!このォ!」

「戦処女神様に頭を下げないとは何事だァ!!」

「指導ォ!!、指導ぉぉお!!」


複数の男子生徒が、嘗ての友に暴行を加えている。

その悲惨な光景を傍目にしながら、頭を下げていた男子生徒は廊下を小走りで移動する。


(急がねぇと…)


とき

それが、男子生徒の名前だった。

装神館學園に在籍する生徒である彼は急いでいる。

その手の中には、焼きそばパンと瓶のコーヒーミルクが収まっていた。

先程、購買で購入した戦利品である。

食堂は、女子生徒の巣窟である。

何処にも属していないものが考え無しに入ると、不快と称されて暴行されてしまうからだ。


だから、刻は購買で飯を購入し、誰も居ない場所で飯を食う。

それが、刻の日常・ルーティーンなのだが。


「おい…ッ、四葩八仙花よひらはっせんか様だッ!」


男子生徒が片膝を突いた。

それに続き、廊下の端を歩く男子生徒達が膝を突く。


(またかよ…)


刻はそう呟きながら、視界に入らない様に、片膝を突く。

大名行列の如く、複数の男子生徒が彼女の後ろを歩く。


「…羨ましいなぁ、選ばれた武器だぜ?」


ぼそぼそと喋る男子生徒。

膝を突き、頭を垂れる男子生徒と、戦処女神の後ろを歩く男子生徒の間には格差がある。

彼ら護衛の如く後ろを歩く男子生徒は、戦処女神に買われた存在だ。


能力と性能を買われ、値段を付けられる。

戦処女神に買われると言う事は、全世界の男性の夢と憧れなのだ。

彼らは選ばれた存在であり、刻を含める頭を垂れる男子生徒達は、落ちこぼれでしかない。


(…腹減ったなぁ、早く去らねぇかなぁ)


腹の虫を抑える様に片手で腹部を擦ろうと動かした時。

彼の手から、コーヒーミルクが入った瓶がごろりと、手から零れてしまう。


「あ、やべッ」


ころころと転がる瓶は、運悪くその場を歩いていた戦処女神の足に当たってしまった。


(…うっわ、マズッた)


顔を上げる刻。

高貴な出で立ちをした女子生徒の視線が刻を睥睨する。


「も、申し訳…」


詫びの言葉を口にしようとした時。

彼女の取り巻きである男子生徒が刻の顔面を蹴り上げる。


「なんのつもりだ貴様ァ!四葩八仙花よひらはっせんか様の靴に瓶を当てるなど、不敬だぞォ!!」


そのまま胸倉を掴まれる刻。

鼻から血を流しながら、男子生徒を睨む。


「クソッが…ッがァ?!」


そのまま、刻は髪を掴まれて床に叩きつけられる。

土下座をする様な恰好をしてしまう刻に対して、女子生徒が声を漏らす。


「お止めなさい」


その言葉と共に、男子生徒は渋々と手を離す。

床に頭を擦り付ける刻に対し、彼女はゆっくりと近付く。


「見た所…契約はされてない様ですのね?」


四葩八仙花よひらはっせんか

そう呼ばれる紫陽花の様な髪と豊満な肉体を持つ彼女。

そのまま頭を垂らす刻の上に乗っかった。

でっぷりと、脂肪を蓄えた臀部が、ときの背中に押し付けられる。

むっちりとした感触が背中に伝わると、彼女の甘い柑橘類の様な匂いが伝わって来る。


「まあ、なんて座り心地が悪い道具なのかしら?」


臀部を左右に揺らす。

どう座っても、刻は椅子としては使えないと思っている。


(た…耐えろ、この程度の屈辱…ッ)


刻は歯を食い縛る。

この世界では男は基本的にカースト制度では一番下。

歯向かうような真似をすれば、どのような目に遭う事か分からない。


「それで?貴方は一体、どの様な武器でして?まあ…契約されてない無価値な存在ならば、大した武器でも無いのでしょう?」


くすりと笑う高飛車なお嬢様。

その言葉に、穏便に、世界の法則に則り大人しくしようとしていた刻の心に火が点いた。

人としての誇りは無い、だが、武器としての誇りを貶される事だけは許せなかった。

武器として侮辱され、そこで反骨を見せなければ、それこそ武器としての誇りの無い、カースト制度の一番下の存在として認知されてしまう。

しかし、武器として彼女を傷つける事は道徳に反してしまう。

ならばこそ、刻が行う行為は、自らの価値の証明を含めての反撃だった。


ときは、彼女の座る背中に、自らの力を解放する。

ぼこり、と服と同化して盛り上がる背中。

おうとつのある丸い円形状のものを背中から出すと、丁度、四葩八仙花よひらはっせんかの臀部…もっと言えば、股に当たる様に出した。


「おっ?!」


唐突な刺激に顔を赤くしながら、動物の様な声を漏らして扇から手を離してしまう。

材質をシリコン製へと変えて、彼女の体に傷つかない様にしながら回転する。


「んっ、このッ!」


刺激を与えられた所で立ち上がり、ときの方へ睨み付ける。

ようやく、ときと目が遭った所で、彼はしてやったり、と言った表情で彼女に告げた。


「歯車、それが俺こと、〈武装人器アーセナリード〉です」


思わず、股を抑えながらときを見る。

彼の背中から出ているのは、ぐるぐると回る歯車であった。


武装人器アーセナリード〉。

この世界、遥か昔の戦の歴史。

殆どの英雄は女性であり、男性は彼女達に使われる武器であった。

超人的な身体能力と男性を武器に変える力を持つ〈戦処女神セイヴァルキューレ〉。

この世界の男性は、彼女たちに使われるための道具に過ぎなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る