第16話 古代遺跡の謎


エルフリックたちが古代遺跡の入り口に足を踏み入れた瞬間、周囲の空気が一変した。入り口を超えた先は、外の世界とは異なる、ひんやりとした空間で、全てが陰鬱な雰囲気を漂わせていた。遺跡内部は広大で、壁一面に謎の符号と模様が描かれ、光源のない空間が続いている。リオが声を上げるも、彼の声はどこか虚ろに響き、反響するだけだった。


「すごいな、ここ…まるで時間が止まっているみたいだ。」


リオが呟くが、その声も空間に飲み込まれるようだった。カイルが慎重に歩を進め、シェルナが光の魔法で周囲を照らす。青白い光が遺跡の壁に反射し、浮かび上がる符号が不気味に煌めいた。


エルフリックは巻物を取り出し、再度その内容を確認しようとしたが、巻物の文字は薄れているようで、どうにも読み取れなかった。何かが彼らを試しているかのようだ。巻物の選択に関する言葉が、さらに謎めいて感じられた。


「何かがおかしい…」


エルフリックが言葉を漏らすと、突然、周囲の空気が重くなった。空間が一瞬で歪み、遺跡の深層から聞こえる低い唸り声が彼らを包み込む。リオが警戒し、周囲を見回す。


「こっちだ!」


カイルが鋭い眼差しで指差すと、突然、闇の中から影のような存在が現れる。それは人間の形をしているが、顔は見えず、長い影のような腕を伸ばして彼らに迫ってくる。


「魔法…か?」


アランが言うと、シェルナは即座に防御の姿勢を取る。光の魔法で敵の動きを封じようとするが、その影のような存在は光を無効化し、まるでその場の空気に溶け込むかのように消える。


「これ、普通の敵じゃない。」


シェルナが顔をしかめると、エルフリックは巻物に再度目を通し、古代魔法の痕跡を感じ取る。彼は慎重に一歩前へと踏み出し、影が襲いかかってくる前に呪文を唱える。


「『光の道標』」


エルフリックの言葉とともに、彼の周囲に光の輪が現れる。影の存在はそれを避けようとするが、その動きが止まることはない。


「追いつけ、エルフリック!」


カイルが叫びながら走り出し、リオが雷の魔法を発動させ、影に向けて放つ。しかし、影は雷の攻撃も無視して迫ってきた。


「無駄だ!この魔法は試練の一部だ!」


エルフリックが叫ぶ。「ただ攻撃しても意味がない。おそらく、これにはもっと深い意味がある!」


その瞬間、影たちは一斉に姿を変え、巨大な影の塊となってエルフリックたちに襲いかかる。シェルナは防御の魔法を強化し、光の盾を展開。カイルは前に出て、影を斬りつけようとするが、どれも虚空を切るだけで、影には触れなかった。


「どうする?!」


リオが叫ぶが、エルフリックは冷静にその動きに集中していた。


「試練の本質を探れ。光と影、この二つがここにいる理由を…」


その言葉を聞いたシェルナがひとつ気づく。


「光と影…。この二つの力を制御できれば、試練はクリアできるはず。」


エルフリックはその言葉を受けて、即座に彼らに指示を出す。


「全員、同時に力を合わせて!」


その指示のもと、リオは雷の魔法を放ち、シェルナは光の盾を強化、カイルは自らの剣を使って影を斬る準備をする。そして、エルフリックは巻物を高く掲げ、古代魔法の力を借りて、両方の力を引き出す呪文を唱える。


「光と影の均衡、試練を越えし力よ、今ここに現れよ!」


その瞬間、遺跡内部の空気が一変し、光と影がぶつかり合うような激しい衝撃が走る。エルフリックの魔法によって、二つの力が完全に調和し、影の存在は一瞬で消え去った。


「やったか…?」


カイルが息を呑みながら周囲を見回すと、影の姿は完全に消え、静寂が訪れた。


「これで試練をクリアしたってことか?」


リオが疑念を抱きながらも、他の仲間たちと共に遺跡の奥へと進んでいく。


「まだ終わりじゃない。」


エルフリックは冷静に答える。


「試練は続いている。この先に何が待っているか、わからない。」


その言葉に、仲間たちは決意を新たにし、さらに深く遺跡の奥へと足を踏み入れた。すると、再び空気が重くなり、壁に描かれた符号が活性化したかのように、微かに揺れ始める。暗闇の中から、また別の音が響いてきた。低い、しかし不気味に耳に残るような音。エルフリックが目を凝らしてその音源を探すと、壁が一瞬で崩れ、その背後から巨大な石の守護者が現れた。


「今度はこいつか…!」


カイルが声を上げ、戦闘準備に入る。


「気をつけろ!」


エルフリックが警戒を呼びかける。


「これは、試練の守護者だろう。闇と光を制御できたからと言って、すぐにすべてが解決するわけじゃない。」


守護者が大きな足を振り上げ、エルフリックたちに向かって踏み込んできた。地面が揺れ、空気が震える。その一歩ごとに、周囲の壁が微かに震え、光の魔法も不安定になっていく。


「これが最後の試練だ!」


カイルが剣を握りしめ、守護者に向かって突撃する。


シェルナもまた、光の盾を前に掲げ、守護者の攻撃を防ぐ準備を整えた。


「みんな、同時に行動して!」と声をかけながら、エルフリックは再度巻物を取り出す。


「今度は、光と闇の力を組み合わせて、あの守護者を打破する必要がある。」


エルフリックの目は真剣で、これまで以上に魔法の力を引き出さなければならないことを感じ取っていた。彼の手が巻物に触れ、呪文の言葉が低く響くと、周囲の空気が再び変わり始めた。


すると、守護者が再び動きを止め、まるでエルフリックの魔法を察知したかのように、重い足音を響かせながらゆっくりと近づいてくる。その動きに従い、遺跡内部の光源も一斉に点灯し、周囲の模様がさらに鮮明になっていった。


「全員、気を引き締めろ!」エルフリックが叫ぶと同時に、守護者が再び動き出し、次の激しい戦いが始まろうとしていた。


―――――――――――――――


お読みいただき、心から感謝しています!物語の世界に共感していただけたなら、私もとても嬉しいです。これからの展開にもご期待ください。皆さんの応援が励みになりますので、引き続きお楽しみいただけたら幸いです!ありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る