異世界アイドル戦記 アイドルファイターズ
コフィア・コーフィー
プロローグ1・異世界へようこそ
舞台は地球とは違う場所、異世界。魔力を持った生き物が生活している。
魔力はこの世界のありとあらゆる物に宿っている。それは、人間も同じだ。
この世界の人間たちは魔術を用いて生活をしている。
『魔術』とは、人が作り上げた魔力を使った超常的な技術の事だ。
また、魔力によって自然に出来た超常現象の事を人は『魔法』と呼んでいる。
この世界の文明は魔術によって発展はしているも、一度大きな戦争や災害がある度に文化の殆どが壊滅してしまう。
故に、優れた文化や発明を残そうと言う想いは地球よりも強く多種多様な文化がそこに根付いている。
その為に、現在の文明は地球の多種多様な文化と街並みが入り乱れている様相だ。
この物語は、そんな異世界のかつて一つの国だった都市で始まる。
その場所とはグマンの国。大陸の国と国が争った戦国時代を終え、今はニード国の一都市となっている地。
この都市は世界樹と呼ばれる大木を中心に中央区、北区、西区、南区、東区の5つに別れている。
・バーの様な場所 時刻不明
その場所は暗く、あなたは席に座っている。
あなたの向かいにはバーカウンターをはさみ、バーテンダーのおじさんがいる。
おじさん「お客様は今日が初めてでしたね……まずはこちらでもどうぞ」
あなたにカクテルグラスを差し出す。
おじさん「もしよろしければ、あなたにグマンの国のアイドルファイトをご説明させて致しましょう」
「それは数百年前の事、戦国時代も終わりを迎えて十数年と言った時の話です」
「このグマンの地に多くの人が集まりました」
「その理由は、古来より伝わる伝説『世界樹の中心で頂点に昇りし者、知恵の実を与えん』」
「この伝説が戦国時代を終え、沸々と多くの都市へと広まり始めたからです」
「知恵の実を求め、人々は争い、この地はまた小さな戦国時代となりました」
「そこに、一人の少女が現れました」
「少女は優しい歌を歌い、美しく舞い、争う人々を癒しました」
「彼女の歌が、踊りが、そこにいた人々全員を魅了した時、世界樹から赤い実が少女の手に落ちました」
「それこそが伝説の知恵の実でした」
「実を手にした少女は言いました」
「この実を欲して争うのであれば、残酷であってはならない」
「少女はそう言うと、その場から光となって消えてしまいました」
「人々は少女の言葉の通り、血を見ない戦いを見出しました」
「少女のように歌を歌い、美しく舞い、正々堂々凛々しく戦うことこそが世界樹が知恵の実をもたらす……」
「武闘と円舞。それによって最も多くの人々を魅了したものこそが、世界樹の認める頂点としたのです」
「それが、今のアイドルファイトの始まりでした」
「現在、このグマンの国でトップアイドルを目指すグループは300を超えています」
「そんな彼ら彼女らはアイドルファイターと名乗り、今も自分達が歌って踊れる場所を巡り、熾烈な争いを繰り広げています」
「そして、アイドルファイターが戦う術は己の魔術と……これです」
おじさんは右腕の厳つい腕時計の様なブレスレットをカウンターに置き、あなたに見せる。
それは黒光りする程重厚でファンタジックな見た目の不思議な機械。
その中心には何かをはめる様な空洞がある。
おじさん「そう……これは魔術ドレス生成装置、ブレスとも呼ばれてますね」
「魔力を流すことによって、ドレスとも見える鎧を作り上げてくれます」
「これはグマンの国でトップアイドルを目指す人々に色々な企業が作り、託されたものです」
「そして、それを起動させるための鍵であるコアマテリア」
おじさんは左手からアイテムを取り出す。
それは薄緑色の宝石を付けた機械的な装置、ブレスの空洞に取り付けられる大きさだ。
おじさん「このコアマテリアをブレスにはめ込み、ブレスを起動させる事でコアに対応した鎧が装備されます」
「この鎧を身に纏う事で、より力強くなり激しい戦闘でも傷を負わずに戦う事が出来ると言うわけです」
「これらの装置は魔術を使った道具、通称魔導具を取り扱うグマンの国の企業が製造と販売をグマンの中でのみ行っております」
「この装置によって戦いの深みは増しました」
「魔術では自分の力量を上回っている相手でも装置の性能差によって勝てる可能性を上げる」
「逆に装置の性能差で劣っていても魔術の力量で性能差をカバーする」
「ファイター達はそのようにして、日々知略を巡らせて戦って、戦って、戦い抜き。誰も後を追う事の出来ないトップアイドルを目指しているのです」
おじさんは取り出したアイテムをしまう。
おじさん「以上がグマンの国のアイドルファイトの説明です」
「今回は、そんなグマンの国で今最もトップアイドルに近いグループの話をしましょう」
「彼女たちとトップを争うライバルグループに、何やら波紋が広がっているようです」
「それでは、異世界の舞台へと向かいましょう……」
周りは暗く、黒一色の世界となり、おじさんの姿は見えなくなった。
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