夜明けを超えられない言葉たち

加加阿 葵

名前のないその感情に愛を込めて

この感情には名前がない

怒りでも悲しみでもなく

形もなく色もない


手で触れようとしても

指の間をするりと抜け

言葉にしようとしても

喉の奥で消えていく


それはまるで誰かの忘れ物のように

ひっそりとそこにあるだけだった

でもその存在を私は見ている

なぜここにあるのか答えはないまま


愛しさなのか空虚さなのか

そもそも感情と呼ぶには不確かで

ただふわふわと漂っている


名前を与えると消えてしまいそうな気がして

気にしないでそっとしておこうと決めた

名前はなくともそれはきっと私の一部だから

名もなく、形もなく

ここにあるだけでいい


ただそれだけでいい

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