転生したけど定番の案内役とか誰もいなかったので好き放題することにしました

テルン

第1話   いつの間にか転生してました

*転生したけど定番の案内役とか誰もいなかったので好き放題することにしました*




「あーそこらへんに美女落ちてないかなぁ」


俺は日向ひなた。普通の高校生だ。

その日もいつものように学校に登校していた。


「そろそろ夏休みだなぁ。一学期結局なにもなかったなぁ。...はぁ、なんか非日常なこと起きないかなぁ。」


そんなことを言いながら天を見上げる。

季節は夏。日差しが痛いぐらいに暑かった。


「今日、最高気温何度だよ...」

そんな愚痴を吐きながら歩いていると


「うお!まぶしっ!」

いきなり空が光った。


「な、なんだ?火球か?」

そう思い目を開ける。


次の瞬間だった。


「は?ここ、どこ?」

俺は辺り一面何もない、荒野にいた。



空がいきなり光ったかと思えば次は知らん場所にいた。

何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった。


「ふむ...」

俺、日向は冷静に自分の置かれた状況を把握する。


「聞いたことがあるぞ...これは、そう。異世界転生だ!ん?でも死んでないから転生ではないか...。転移?まぁ転生ってことにしておこう。」


俺は生粋のラノベ愛好家なのでそういうのには詳しいのだ。こんな適当だと、どこぞのガチ勢様がお怒りになられそうだが気にしない気にしない。


とりあえず異世界転生とはなにか。説明はいらないかと思うが一応簡単に言おう。

いきなりさっきまでいた世界とは違う世界に飛ばされる。

そういうものをだいたい異世界転生だとか召喚だとかと呼んでいる。


「いやーまさか俺がそうなるなんてなー」

だが、転移したということは

「定番の案内役とか...」


俺は辺りを見渡す。


「美女が助けを求めてたり...」

後ろを振り返る。


「いきなり猛獣がでてきてそこで能力を知るとか...」

...寂しい風が吹く。



「......は?」


いやいやいやいやいや。


そんなことないだろ。だってここのことなんも知らないわけだし?ほんとにここが異世界かもわからないし?なんなら能力とか魔術とかがあるかもわからないし?

だがそれでもなにかが起こることはなく...



「約12時間経過。いまだ進展なし、か。」


幸いスマホは生きており、時間の確認だけはできた。


「にしても腹すかねぇな。なんなら喉も乾かないぞ?」


ここがそういう世界だからなのか俺にそういう能力が宿ってるのか定かではなかったが、

「ここが異世界であることは確定だ。」


先ほども言ったがここに来てから12時間がたった。だが、一向に太陽らしきものが沈まない。確かに動いてはいるが、元居た世界と比べると圧倒的に遅い。


「......むぅ...」


俺はこの12時間、ずっと座ったりぐるぐる歩き回ったりしている。それはもちろん誰かが来るということに縋っていたからだ。


だが、このままずっと待っていてもどうせ誰も来ない。


「そろそろ行くか。」


だったら自分からどこかに行ってみたほうか断然いい。


「はぁ。まだこの世界に来たばっかで言うことじゃないが、...クソだな、この世界。」


そう吐き捨て、俺は歩きだすのだった。



俺はあてもなく太陽のようなもの(以後太陽と呼ぶことにする)が進むほうに俺も進んでいた。


「あちー。異世界でも夏とかあるのか?」


ギラギラと一人孤独の俺に無慈悲にも照らしてくる。


「あーもう。今夜だったらもっと楽なのになー」


その瞬間辺りは涼しく、暗くなり、太陽は沈み切っていた。


「...!!?」

なにが起きた!?


「俺が言ったからか?それともそういう世界なのか?」


結局俺一人じゃ何もわからなかった。


「試しに、だ。朝...いや、『昼になーれ』」


その瞬間太陽は上がり、先ほどのようにギラギラと俺を照らした。


「おぉ。口に出したことを実現させる能力とかそれかよくあるチートスキルとかそういうところか?」


いや、最強かよ。


「じゃあ、『今ここに美女がいたら』!!」

......

............

「なにも...起きない?なんで?」

能力違う??


「さっきは夜だとか朝だとか言って能力かスキルが発動した...。ってことは時間操作?いやでも太陽かこの星自体を操作して強制的に変えたとも考えられる...。」


うーん。考えれば考えるほどわからない。

「ま、時間はいっぱいあるんだ。ゆっくり試していこう。」


それから俺はあてもなく歩きながら能力なのかスキルなのかわからないものを試しまくっていた。


「たぶんわかった。俺は時間の操作ができる。まぁ使うのになにか代償があるのかは知らんが」


もし魔術だとしたら定番のMPが減るだろうし、スキルだって無限ではないはずだ。能力だとしても体力は使うだろうし。


「こればっかりは俺一人じゃわからんな...はぁどこまでこの荒野が続いてるのか知らないし、早速、能力の応用といきますか。」


俺は俺自身の時間を加速させる。


「周りなんて気にしない。走っていこう」

そうしてまわりのものを吹き飛ばしながら一直線に走っていくのだった。



小一時間経った頃だろうか、岩しかない荒野からいつのまにか緑あふれる草原に来ていた。


「はぁ...よかった。この世界が荒野だけじゃなくて」

俺は能力を解く。


「はぁはぁ」

別に俺は運動は可もなく不可もなくという程度なのでどのみちこのくらいが限界だった。


「いままでほぼ徹夜だったし、適当に草を集めて寝よう。」

そうして木の枝を取ろうとした瞬間。


「待たれよ。」


背後からそんな低い声が聞こえた。

俺はやっと人に会えたと内心喜びながら振り返る。


「な、なんだ?」


振り返るとそこには

「ここでなにをしておる」


俺の一回りも二回りもでかい男が立っていた。



「えーと、どなた様で?」


先ほどまでの喜びは一切消えていた。


「貴様...俺を知らんのか?」

「え?会ったことありましたっけ?」


一応俺は基本的に友人のような奴は忘れない。

だが、俺にはこんな大男と会った記憶などなかった。


「いや、会ったことはない。だが俺はなにかと有名人なのでな」

「はぁ...。いったい...?」

「ハハハ!!本当に知らんのか!いい教えてやろう!俺の名はアルドゥース。ここの近くの魔王城の魔王をしておる。」

「...へー魔王城。それは物騒ななま、え...?」


ん?この人、今魔王って言った?


「は?マジ?」

「マジだぞ人間。」

「...っーー!っえええぇぇぇぇぇぇ!?」


その日、俺は生まれてから今までで一番大きな声をあげた。

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