第91話


子供好きだって言ってたし、「女の子が産まれたらピアノやバレエを習わしてやりたい。男だったら休日にキャッチボールなんかもいいよな」



なんて一緒に暮らす前にちらりと聞いた。



夢を語るにはあまりにも小さくて平和だが、俺はそんな当たり前のものも与えてやれない。



その気になれば養子とか代理母出産とかいくらでも手があるが、血の繋がった子供が欲しかったに違いない。



だからと言ってヒロを手放す気には到底なれないが、それでもそのことに関してはちょっと悪いと思っている。



「小さいとか言うな。それに今更何言ってんだよ」



ヒロが俺の腕の中で身じろぎして、ちょっとだけ上体を起こした。



苛立った様に眉間に皺を寄せている。



怒ったヒロも可愛いけど、綺麗な顔が台無しだぜ?



「俺が何考えてたのか分かったのか?以心伝心??」なんてふざけて言うと、



「お前心の声が口に出てたぜ」とヒロは呆れ顔。



口に…?気付かなかったぜ。



俺様としたことが…






「確かに俺は子供が好きだし、欲しかったけど、周が居なかったらどれも意味がないんだ。





俺は、お前が居ればそれでいい。






ずっと隣に居てくれればそれでいい―――」








ヒロが肘をついて俺を覗き込んできた。




そしてちょっと顔を赤らめると、俺の唇に口付けを落とした。



さらりと心地良よくて柔らかいヒロの唇。





ヒロ―――………



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