第78話




――――


――



数時間後、俺たちは飛行機の中に居た。しかもファーストクラス!



普通に生きてりゃ俺なんて一生縁のないクラスだ。



周の性欲の餌食にされ、腰が痛い俺に座り心地のいいシートは楽だけど。




「それにしても円周率がロック解除なんて分かりにく過ぎ」



俺は忌々しそうに手摺りに肘を突き、隣に座る周を睨み上げた。



「分からなかったらどーしてたんだよ」



「円周率?何を言ってる。あれは俺の誕生日だ」



「誕生日??」



俺は目を瞬いた。何だよ円周率じゃなかったのかよ。



って言うか誕生日、はじめて知ったぜ。



あんだけ“円周率”の周って言ってたから、てっきりそうかと思ってたけど。



「3月14日?ホワイトデーかよ。ま、覚えやすいっちゃ覚えやすいがな」





「ホワイトデーか。ふむ、





“恋の円周率3.14”いい響きじゃないか♪」






「ああ…はい」最早そう答えるほかない。



何だよ、そのロマンチックなフレーズは!って本当はツッコミたかったけど、



体力と時間の無駄だ。



色んなことがありすぎて俺は疲れて眠い…



この心地良い香りの中―――眠りにつくのが



俺の幸せ―――……





だと思ってた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る