第75話


『お前が望んでいたマイホームに仲良し家族四人だ。



俺はこんなものしかお前にやれないけど―――




だけどどんなことでもいい。お前が喜ぶことをしたかったんだ』





昨日―――周の寝室から聞こえてきた不可解な音は―――……このミニチュアのドールハウスを作ってる音だったんだ。



ヒツジも、狼も―――おまけにちっちゃいのもいる。






マイホームも、可愛い奥さんも子供も…確かに俺が描いた夢だったけど、






だけど周が居なきゃ意味がない。





意味が―――ないんだ……





ポタッ……



ふいに屋根の上に水滴が落ちて、俺は自分が泣いていることを悟った。



堪えていた涙が、溢れ出す。



感情が溢れ出す―――……






好きだ。






止めようと思っても、もう俺自身どうすることもできなかった。




どうしようもなく―――好き………





「………よ…」



『え?』






「行くなよ周!俺の傍に居ろよ!!





俺の幸せはお前と居ることだ。俺が笑顔で居るにはお前が隣にいないとダメなんだ!





お前が好きなんだよ―――」






ようやく言えた言葉は、涙の混じった叫び声で、あいつに伝わったかどうか分からない。



だけど





これが本当の俺の気持ちだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る