第58話


前は知るのが面倒くさかったし、知るのが怖かった(色んな意味で)



だけど今はあいつのすべてを知りたい―――






周―――好きだ。





大好きだ。






そんなことを思いながら、いつの間にかうとうとと瞳を揺らしていた。






「―――ヒロ」






遠くであの甘くて低い、くすぐるような声を聞いた気がするけど、



それは夢で、



あいつの温かい手のひらでそっと頭を撫でられ、あいつの香りをリアルに感じて―――



俺は夢で会えたことにも、嬉しさを覚えた。



こんなこと―――はじめてだ。





だけど




まるで甘ったるい砂糖みたいな恋の夢を見ている筈なのに―――



周の声は初めて聞く、寂しくてちょっと切なそうな弱々しい声だった。







「悪かったな。今まで俺に付き合わせて。だけどこれからはお前が望んだ日常を取り戻せる」




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