第51話


「比奈―――…ごめん。俺………」



俺は比奈をやんわりと引き剥がした。



「……どうして?」



比奈が少しだけ曇った瞳で、俺を見上げてきた。



俺はその曇った瞳をまっすぐに見返して、





「俺、好きなヤツがいる」





一言言うと、“開”ボタンを押した。



エレベーターの扉が重々しい音を立てて再び開いた。



比奈は唇をきゅっと結んだまま、スカートの生地をぎゅっと握っていた。



そんな比奈をちょっとだけ振り返り



「ごめん」一言謝って、俺は走り出した。







俺、周のことが好きだ。







俺は比奈みたいな女が好きだったけど、周は女じゃないけど―――



あいつが男だろうと女だろうと関係ない。






俺はあいつの全部が好きなんだ―――




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る