第49話


比奈の体は柔らかくて―――甘い香りがふわりと漂ってきた。



彼女が愛用していた香水の香りだ。







周の香りとはまるきり違う―――



周の感触とはまるで違う―――



周とは―――







そこまで考えて、俺ははじめて比べるものじゃないと気付いた。





そう、最初から比べてはいけないものだったんだ。





あいつはありのままの俺を受け入れてくれた。



ありのままの俺を求めてくれた。



そしていつだってストレート過ぎる愛情を俺に注いでくれた。





あいつの前では素直に笑ったり怒ったり。



ドキドキしたり、気持ちよかったり―――



はじめての感情ばかり見つけ出して最初は戸惑ったものの、それが今では心地良い。







男とか女とか―――………






あいつは俺の前に現れたときから男とか女とか以前の問題よりも―――特別で、



あいつが何者で誰であろうが






俺の中はあいつで溢れていた。






俺は―――あいつが好きなんだ―――………






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