第48話


突然の発言に俺はびっくりして目を開いた。



「聞こえなかった?あたし、ヒロとやり直したいの。ダメ?」



もう一度言われて、それが夢じゃないことを悟った。



はっきり言って俺の頭の中は混乱している。



「え…?だって比奈……君は経理部の守川と付き合ってるんじゃないのか?」



思わず言ってしまって、はっとなった。



慌てて口を噤んだが、比奈は気にしていない様子だった。



「誰かから噂でも聞いたの?守川さんとは何でもないよ…」



何でもないヤツと朝の電車で一緒に出勤するかよ。



しかも比奈は反対方向の電車だ。偶然一緒になったなんてある筈がない。



そう思ったけど、結局言葉は口に出なかった。



「ね。ヒロ……あたしたちもう一度やり直そう?」比奈はそう言って俺の腰に抱きついてきた。



忘れかけていた比奈の柔らかい感触。



それは周の引き締まった体の感触と、まるきり違うものだった。



女の子ってこんなに柔らかい生き物だっけ―――



そんな風に思って、



俺、ヤバいな……女の感触をすでに忘れかけている。



なんて顔をしかめた。



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