第17話


俺の降りてきたエレベーターと違うエレベーターから比奈と塩田さんが降りてきた。



塩田さんは「あ、お疲れ様で~す♪」と笑顔でぺこりと頭を下げる。



一方比奈は俺と目が合うと、露骨に視線を外した。



な、何で!?



「ひ……」呼びかけようとしたが、比奈はパンプスのヒールを鳴らしてスタスタ行ってしまった。



「え?いいの、比奈。主任だよ」と塩田さんが後を追っかけている。



「いいの。別れたから」



「え!どーして??」



「なんかぁつまんないし。面白みがないんだよね。淡々としてるって言うか。結婚しても平凡な主婦にしかなれない気がするしぃ」



比奈がちょっと振り向いて、こっちを見る。



俺は唖然としてその場で固まった。



つまらない…?面白みがない??



「ふぅん。そんなもん?」と塩田さんは気の無い返事を返している。



「ところでさぁ比奈、そのバッグシャネルの新作でしょ?買ったの??」



「うん♪この間お店に行ったら欲しくなっちゃってさぁ」



とすぐに話題を変えている。



そして賑やかな話を振りまいて行ってしまった。



当然俺は追いかけることもできず…



所詮彼女らにとって俺はそんな存在で……



俺はがくりと肩を項垂れた。



「あれがお前の愛しの比奈?何だ、大したことないじゃん」



周は腕を組んだまま比奈の方を見てにやりと笑った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る