ぼっちの俺が陽キャグループから孤立した超絶美少女ギャルに優しくしたら、凄く絡んでくるようになった

うちわ

プロローグ

 高校一年生の俺、田所 信二(たどころ しんじ)はコミュ障陰キャぼっちである。


 中学時代、アニヲタ趣味をきっかけにクラスメイト全員から笑われたりキモがられて以来、他人を極度に恐れて自分から避けるようになった。


 ぼさぼさの髪の毛に、当時太っていた見た目も関係あるのかも知れない。

 小学校時代の名残でお調子者みたいにオタク趣味を布教したことも原因かも知れない。


 いずれにしても、中学時代のトラウマは俺の心の中に深く根付いていた。


 そんな俺が高校進学に際して出した結論は、『全部隠そう』だった。


 派手な高校デビューはいらない。漫画みたいな青春も望まない。


 オタク趣味も、このお喋りな性格も全部隠して、静かに静かに三年間過ごすのだ。


 高校は地元民が通わない電車で一時間掛かる場所にして、入学式の自己紹介もその後のクラスメイトとのやり取りも当たり障りのない無難なやり取りで済ませてきた。


 結果、ゴールデンウィークを過ぎた頃には、「田所? ウチのクラスにいる人だっけ?」レベルの立ち位置を手に入れることが出来たのだった。


「何それそれめっちゃウケる!」

「マジそれな!」


 そんな日々の休み時間。


 授業の窮屈さから解放されたクラスメイト達が、それぞれのグループを形成して談笑を始める。


 特にクラスカーストトップの陽キャグループ(美男美女揃い)の声が煩い。


 俺は静かに化学の教科書を持って足早に教室を出た。

 次の授業は実験室で行うからだ。


 まあ早く出たのは、和気あいあいとした空気に触れて一人の自分が惨めに感じたり、周囲からぼっちな可哀想なやつって思われたくないからなんだけど。


 入学してからの一ヶ月近くはこういった移動教室では毎回俺が一番乗りだった。


 このまま連続記録を卒業まで更新し続けるのだろうか。


 そんな事を考えながらいつも通り実験室に入る。


「……あれ?」


 思わずそんな声を漏らしてしまう俺。


 不覚にも、既に先客がいたのだ。


 俺の声に反応した人物はこっちに顔を向ける。


 俺は慌てて顔を逸らして自分の席に着席する。


「……」

「……」


 気まずい。


 いつもならこのタイミングでスマホでアニメとか観てるのに。


 ぼっちにとっては窓際一番後ろの優良席だけど、テーブルの向かいにその人が座っているとなれば、気軽にその画面を開くわけにはいかなかった。


 特にこういった人種には絶対にバレるわけにはいかない。


 さっき俺が驚いたのは、何も先客がいたからだけじゃない。


 一番こういうこととは無縁そうな人物が座っていたからだ。


 おかしいな。


 いや、でもさっき見た時も確かにいなかったような気がする。


「私の顔に何か付いてる?」

「……っ! な、何も」

「そっか」


 彼女の名前は夏目那月(なつめ なつき)。


 クラスの陽キャグループに属し、校内で“絶世の超絶美少女ギャル”として注目を集めている女子である。






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