悪役令嬢に転生したので男装したいと思います

永遠セカイ

第1話 大罪人の恋心


 走れ!走れ!走れ!


 息を荒げながら、脚を我武者羅に動かす。

どれだけ息が上がって苦しくても、泥に塗れようとも!

 

 腰を締め上げるコルセットやバランスの悪いヒールは捨てて。

 安っぽい庶民の服を着て、雨に濡れながら君と走って。


 何故だろう。

こんなにも危なくて、無責任な事をしているというのに。


 こんなにも、楽しい!!!


 上がる口角を抑える事が出来ないまま、君と逃げ回る。


 後ろから聞こえてくる複数の重い足音。

水を跳ねる音が広がり、泥水が服につく。


 隣を走り抜ける君は泣きそうな顔をしていた。

 後ろから追いかけてくる大柄な男達に怯えているのか、後悔が襲ってきたのか。

 君が何故悲しんでいるのかはわからない。

でも、私は君と逃げてよかったと思っている。


 そういえば、彼らはどうなっているのだろう。 

 私たちの所為で責められるという事は無いと思うが、申し訳ない事をしてしまった。


 「サファリア様!」

 隣の君が大きな声で呼びかけてくる。

この大雨に負けじと叫んでいるのだろう。

私も同様に、大きな声で返事をする。

 「何!?」

 それから君は大きく息を吸って、確かに言った。


 「私、凄く楽しいです!」


 危機的状況下で、許されるはずがない事。

きっと女神様もお怒りだ。

 公爵家の長女ともあろう私が、責務を放棄して駆け落ちしているのだから。

 しかも庶民の女相手に。

法律を破りまくりの愛情を抱いた君と私は、何処へ行くのだろう。


 何処にも受け入れてもらえず、誰にも理解されない。

 そんな恋心を抱いた私たちは、大罪人だ。


 でも、掟を破ってでも、誰にも理解されなくても、今までの努力が砕けようとも。


 私は、いつになっても君を好きと言い続けるだろう。

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