第125話 ショウコ やりすぎ 

「初めは薬草採取だね。僕もこういう依頼から始めたかったよ…」


僕達は冒険者ギルドに移動して依頼を受けている。

こうやって色んなイベントをこなしながら恋愛をするのだろうか…。


「じゃあ行くでありんす!わっちに付いてくるでありんす!」


リーダーはトコヨなの?大丈夫かなこのパーティ…


そして道中に敵が出てくるのだが僕は回復以外に何も出来ない。なので後ろから黄色い声援を飛ばすしかできないのである。


「トコヨくーん!頑張ってぇー」


「わわわ、わっちのかっこいいところ良く見ておくでありんす!」

動揺してるな…。トコヨが動揺するのって結構珍しいと思う。


「エルナ君もファイトー!」


「余裕じゃね?こんなん瞬殺っしょ!」

エルナは案外普通だな。なんかもう少しキョドって欲しいんだけど。


「アリアくーん!やっちゃえやっちゃえー!」


「デゥフ!ま、任せるでござるー」

アリアは限界化したか…。これは楽しみ甲斐があるってもんだ。


全員槍を持つ異色のパーティーだが流石に雑魚敵に負けるような事はない。チクチクチクチクと虫歯菌みたいなパーティーである。


「みんなお疲れ様ー、回復魔法かけるから並んでー」

こんな感じで虫歯菌の皆様の戦闘が終わったら回復を繰り返し、やっと薬草の採取ポイントに到着した。


「お!あれじゃね?なんか光ってっし!」

地面にはあからさまにこれですよと言わんばかりに光った薬草が点在している。

分かりやすくて助かるわー。


「じゃあさっさと採取するでありんす!手分けでありんす!」

そう言って駆け出すトコヨ、しかしこのゲームはハプニングが発生するんだ。


今で言うとトコヨは何もない所で躓き、僕の胸に飛び込んできた。


「トコヨくん何してんのぉ?くすぐったいんだけどぉ」

一体僕は何を言っているんだろうと思うがこれが楽しくてやめらんねぇんだ。


「わ!わざとじゃないでありんす!!本当でありんす!どうか内密に!!」

慌てすぎじゃない?誰に秘密にすんの?みんないるのに。


「ちょっと何してるの!ダメだよそんな…ふぅ」

アリアちゃん?どうしたの?着替えいる?


「早く薬草もって帰るべ!イチャイチャは帰ってからにしなよ」

エルナ君…どうにかしてキョドって欲しい!僕にはその義務がある!うーん…ある!


その後はみんなで薬草採取。

エルナは明らかに距離を置いているなぁ…ちょっとちょっかいを出すか…。

怪しまれないように違和感のない会話で…。


「ねぇエルナ君!調子どう?パンツ見る?」


「なな…何言ってんだし!見ないし!早く薬草集めないと夜になっちゃうし!」


「えー、だってさっきからチラチラ見てるの知ってるんだけどなー」

僕はスカートをパタパタしながらエルナの周りを走り回る。どうだい?こんな女の子は。ひょうきんだろ?


「ちょ!集中できないんだけど!何がしたいんだよ!普通にヤバい奴じゃん!」


あー…楽しいこれ…。正直普通に頭おかしいけど。


「本当に夜になっちゃうでありんす!ちゃんと集めるでありんす!」

あ!トコヨ君から怒られちゃった!テヘペロ。


なんとか薬草は集め終わり、帰り道。どっかのバカが薬草集めの邪魔をした結果暗くなってしまった。


「もう暗くなっちゃったよ!ショウコちゃんが色々邪魔するから!」

ごめんねアリアちゃん…僕からするとサービスみたいなもんだったんだ…。でもドゥフドゥフ言いながら見てたじゃん…。


「全くでありんす!ショウコは帰ったら厚着をするでありんす!」

いやでーす、僕は露出癖のある少女と呼ばれようがミニスカートを履き続けまーす。


「ねぇなんか聞こえない?グルルルって、アリア?」


「私じゃないよ!見て!後ろから何か…狼!」


「デカいでありんす!みんな!槍を構えるでありんすー!」

じゃあ僕は後ろで応援しておきますね。頑張って下さい。


しかし巨大な狼は槍の三人を飛び越え…なんと僕目掛けて攻撃してきた。


「「「ショウコちゃん」」」


え?これ死んだらどうなんの?棺桶に入って教会とか連れてかれる感じ?

狼は大きく振りかぶり、僕に向かって爪を振り下ろしてきた。


「ありゃまーー!」


避けられる訳がない、僕は間抜けな声を上げなすがままに狼の爪で引き裂か…いや、なんだろうこの感じ…。


狼は僕に一撃を加えると満足そうに引き返していった、なんだったんだ?


「おい!ショウコ!大丈夫か…いや…まず…その、なんだ…」

どうしたのエルナ君。そんな赤い顔しちゃって。


僕は自分の格好を見て驚愕した。おお!服が破けて色々見えてる!ラッキー!!


「早く隠すでありんす!はしたないでありんす!」


「おうふ!ショウコちゃん…ごちそうさま…ふひ…」


「おい!これ着ろよ!風邪引いたらやべぇじゃん!」

エルナ君からコートを借りたがコートの下は裸同然!これは…いける!


「ねぇもっと見たい?」

僕はコートに手をかけ脱ぐ素振りをしてみる。


「もうやめるでありんす!どうにかなっちまうでありんす!」


「早く帰ろうぜ!少し休んだらな!」


「もう満足したんでいつでも出発できますよ。」

ん?アリア君なんかスッキリした顔してるね。元気そうで何より。


「まあちょっとやりすぎたね。さっさと帰ろうか」


全員の槍の様子が戻ったところでギルドまで帰り、宿屋に向かう。

これ何日あんの?もうそろそろ心が乙女になってしまいそうだよ。


そして今僕はお風呂に入っているワケだが…なんか自分の身体だとあんまりだなぁ…。

鏡で見ると美少女の裸なんだけど…なんか別に…。


出るか…。少しワクワクしていたけどなんか普通だったよ。やはり男の身体の方がしっくりくるな。


さてと…。



…………その頃男湯では



「ねぇ何これ本当に邪魔じゃね?なんか制御できねぇし!」


「本当でありんす!ショウコに反応するもんだから厄介極まりないでありんす!」


「でもこれはこれで…なんか今は可愛いし…」


「目を覚ますでありんす!!そんな亀みたいなの可愛いワケないでありんす!!」


「なんかすげぇ疲れるんだね男って。」


「でも女も疲れる時だってあるでありんす。」


「お互い様だね」


「もう十分じゃね?間違いが起こる前にショウコに言って終了しようよ」


「そうでありんすな。でもちょっと楽しかったでありんす」


「貴重な経験だったね…。少し名残惜しいけど終わりにしようよ」


「名残惜しいって何がでありんす…アリアちょっとおかしくなってるでありんす…。じゃあお風呂から上がったらショウコに言って終了でありんす!」


そこにやってくる完全に頭がおかしい女の子。


「おーいみんなー!一緒に入ろうよー!元気にしてあげるからー!」


「「「終了!!!!」」」


…………。


「みんな結構楽しんでたじゃん…」

僕が全員を振ってゲームを強制終了し…今なぜかお説教をされている可哀想な元ショウコ…現在はただの可哀想なショウ。


「なんでありんすかあれ!痴女も良いところでありんす!こっちは恋を探すっつってんのに!」

恋見つかった?結構ときめいてたよね?


「無茶しすぎじゃん?もう少し配慮してもらわないと厳しいっしょ」

だって楽しかったんだよ…。エルナもすげぇ見てたクセに…。


「でももう少しやってても良かったかも…」

アリアちゃんはそうだね。でも絶対やめておいた方がいいよ。見た目子供なんだから、色々規制とかあるしさ。


「なんの時間だったんでありんす…しかし良い経験をしてしまった実感もあるでありんす…」


「なんかショウがウチの脚よく見てたのが今なら分かるよ…無意識なんだねあれ」

いや、それは素人で僕は意識的に見てるよ?舐めないでよ。


「男の子って大変なんだね!これからは気をつけるよ!」

何に?スカートヒラヒラさせながら男の子の周り走り回らないとか?


「まあわっちは寝るでありんす…ベッド借りるでありんす…」

「私も疲れちゃった。」

そう言ってトコヨとアリアは寝室へと向かっていった。

僕も疲れたし寝ようかな…。


「そういえばショウにお返ししてないね!どう?これ、やばくね?」

エルナは急に僕に抱きつき密着して話しかけてきた。


「ちょ!近いって!でも柔らかい!でも近い!!」


「ねぇどう?今どうなってる?超ヤバくなってる感じ?」

僕のショウ君はこんな事で負けない!でも離れて!ショウ君がそろそろ大変だって言ってる!


満足したのかエルナは離れ、僕はなんとか何かを守り抜いた。


「エルナさん流石にやりすぎっすよ!」


「まああんだけやられたし?お返し?的な?じゃあウチは帰るからゆっくり一人で頑張ってねー、バイバーイ」


手をヒラヒラさせて上機嫌で帰っていくエルナ…一人で休むんだが?何を頑張れってんだいおかしな事言うもんだ全く。


しかし楽しかったなぁ…でもあれは麻薬と一緒だ…。

しばらく自重しておこう。


どこが恋愛のシミュレーションだったのだろうか…。

ただの性癖を増やすゲームじゃないのかあれ。

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