第116話 理由 シチュー 家族

「ユキさんの故郷ってのどかですねぇ…」

僕は今ユキさんと手を繋いで大樹?までお散歩中。

僕はユキさんとお手手を繋いでいる!


「まあ何もないところですけどね、私はこの田舎が嫌になって町に出たんですけど…やっぱり帰ってくると恋しいというか…」

なんか意外だな、私こんな田舎はイヤ!とか言うタイプじゃないと思ったんだけど。


「おや、ユキちゃんじゃないか、なんだい男と手なんて繋いで、やっと結婚する気になったのかい?」


「ちょ、おばさん、違いますよ!これは…その…ちゃうんやで!」

あーあ…おばさんのせいで手離されちゃったんやで。


「なんだい初々しいねぇ…まあ仲良くやんなよ!おばちゃん邪魔しないからさ!」

僕に親指をグッと立てて歩いて行くおばちゃん、今まさに邪魔をしたおばちゃん。


「すみません…なんせ小さい村なので…」


「いや良いと思いますよ、みんな仲良さそうで何よりです。」


「まあそれはそうなんですけど…あっ、もうすぐ大樹ですよ!」

いや無いよ?大樹って大きい木だよね?おじさんの名前とか言わないよね?


「あそこです!落ちないように気をつけて下さいね」

そう言われて少し進んでいくと急に大きな穴?あっぶねぇなここ。

穴の中には立派な木が一本立っていた。確かに大樹だわ…タイジュ叔父さんじゃないわ…


「この村の守り神なんですよ。帰って来た時と出発する前はこうしてお祈りをするんです。まあ気休めだとは思いますけどね。」


「なるほど、じゃあ僕もお祈りしておこうかな」

ユキさんの真似をして僕もお祈り。そういや今まで神頼みなんてした事なかったな…。最近神って聞くとビール飲んでるヤツの顔がチラつくんだよね。


「この穴の下ってどうなってるんですか?」

かなり深い、底は見えないし気にならない?


「分からないですねぇ、降りたら絶対帰って来れないですし…」

今度誰かと来たら潜ってみようかな、オバケとか出たら怖いし、ギャースとか叫んでるのユキさんには見られたくないし。


「あの、このタイミングで聞くのもなんなんですけど…どうしてこの村までの護衛を僕に頼んだんですか?」


ユキさんは少しの沈黙の後に口を開く。

「いえ…その…ショウさんに見て欲しかったんです。私の自慢の故郷…私が生まれ育った場所を…」


「確かにのどかで綺麗で、みんな暖かい良い村ですね。ユキさんが優しくて可愛く育ったのも分かる気がします」


「かわ!可愛いですか!?ショウさんから見て私可愛いんですか!?」


「可愛いですよ!?今の感じも特に!」


「へ、へぇー…そうか、そうなんだ、へへっ」

この人が可愛くなかったらどうなる?!いやなんだろ…分からん!きっと大変だ!太陽とか消えるかも!


「そ、そろそろ帰りますか!是非夕食を食べて行って下さい。私が帰ると絶対シチューを作ってくれるんです。」

お家ご飯?母親の?絶対美味しいよ!


「じゃあお言葉に甘えて…楽しみですね」

そして来た道を引き返す僕達、途中でまた色々なおじさんとおばさんから冷やかされる僕ら、でも悪い気はしないんだよね。あったけぇ村だよ本当。


「ただいまー」

「お邪魔しまーす」


「あ!帰ってきた!今お母さんがシチュー作ってるよ!ショウさんも食べてくの?!」


「そうだね、ご馳走になろうかな」

ナツちゃんは元気なユキさんって感じだな。なんか新鮮な感じ。


しばらく三人で談笑しているとお母さんがシチューを持って現れた、そういえば名前ってなんだろ。


「美味しそうですね、あの、そういえばお母さんの名前って…」


「そういえば言ってなかったね、モエだよ、まあお母さんって呼んで貰っても構わないけどねぇ」


「お母さん!何言ってるの!?」

ん?ユキさんどうしたの?あぁ、そう言う事か…。


「まあモエさんって呼びますね。それにしてもこの香り…食欲をそそりますね」


「ユキの好物なんだよ、子供の頃から好きでねぇ…帰ってきたら決まってこれさ」


「もう!お母さんそれは良いから!早く食べましょう!」

「お腹空いたよー」

女三人か、モエさんも色々苦労があったのだろう。娘二人を立派に育て上げた立派なお母さんだね。


全員で食卓についてシチューを食べる。なんだこの…涙が出るような懐かしい味は…美味いよ母さん!


「おや、気に入って貰えたようで何よりだねぇ、おかわりもいっぱいあるからどんどん食べな!」


「はい!頂きます!お母さんおかわり!!」


「おやおや、息子まで出来ちまったよ。本当に息子になったら毎日でも…」


「お母さん!!私もおかわり!!」


「ユキ、そんな目で見るんじゃないよ…冗談じゃないか」

ユキさんは顔を真っ赤にしてお母さんを睨んでいる。そんな顔もキュート!


「お姉ちゃんって分かりやすいよねぇ、ショウさんライバル多そうだし早くしないと誰かに…」


「ナツ!あとでショウさんがチョコレートくれるって!」

言った?まあ別にあげるけど。


「我が姉ながら…素直じゃないんだから…。まあチョコレート貰えるなら良いや!」


顔を真っ赤にしたユキさんとそれを見て笑うモエさんとナツちゃん。良いなぁ…どこも温もりで溢れているよ。


美味しすぎてちょっと食べすぎた…。

食後のお茶を飲みながら少し休憩しているのだが…。


「ショウさん!あの…チョコレートを…その…」

ナツちゃんまだ食べるの!?

まあ約束だしね。僕は何も言ってないけど。


「じゃあお風呂入ってからデザートでも食べますか」


「ショウさん、申し訳無いんだけどお風呂はないのさ、高級品だからねぇ…」


「任せて下さい、僕のユニークスキルに案内しますよ」

地下室の扉を出し、みんなで降りていく。

ユキさんはいつもの事だが二人はかなり動揺しているかな?


「なにここ!!見た事ないものいっぱい!!」

「たまげたね…こんなの夢物語じゃないか…」


今度は僕がおもてなしをする番ですね!!



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